【吉備国際大学保健医療福祉学部作業療法学科 准教授 京極真】
Q 他の職種から「あなたのやっていることには意味がない」と否定されることがあります。私自身は大切だと思うからやっているのですが、全面否定されると不安になります。「意味がない」と否定する人にはどう接したらよいですか?
意味があるかどうかは、その人の志向性(欲望・関心・目的・身体)によって変わってきます。従って、対応の基本は(1)意味ー志向性の関連を整理する(2)自身の志向性を開示しながら説明する(3)相手の志向性に合わせて説明する-になります。
■意味は立場によって変わる
意味のあり/なしをめぐる信念対立は、多職種連携において起こりがちです。多職種連携は共通の目標を達成するために行われます。各自が少しでも目標の達成に役立つ方法を考える中で、「それは意味がないのでは」といった発言も出てきやすいのです。
では、誰かの行動についての意味は、ほかの誰かが簡単に全否定できるようなものなのでしょうか。結論を言うと、否です。原理的に考えると、意味には不変性がなく、いろいろ変わる性質があるからです。全否定しようとしても、どこかで肯定の余地があるわけです(その逆もあります)。
何に意味を感じるかは人によって異なるのです。例えば、治療成績の向上に意味を感じる人もいれば、プライベートを充実させることに意味を見いだす人もいるはずです。
医療職の場合、医師は病気の診断・治療に意味を見いだしがちだったり、作業療法士は作業ができる(enabling occupation)/作業に関わる(engaging occupation)ことに意味を求めがちではないでしょうか。職種によって何に意味を見いだすかも違うのです。
このように、意味は立場(ひと、職種など)によって違ってくる、という特徴があります。だから、「意味がない」と否定されたからといって、即座に不安になる必要はないのです。「意味がない」のは「私(発言した人)にとって意味がない」のであって、立場が違えば「意味がある」可能性があるからです。
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次回は9月1日5:00を予定しています
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