【日本遠隔医療学会 常務理事 長谷川高志】
遠隔医療とは何か? 政府の未来投資会議において安倍晋三首相は、2018年度の診療報酬改定で遠隔診療の評価を進めると明言し、新聞やテレビで取り上げられる機会も増えた。
テレビ電話で家にいながら医師の診療を受けられるようになるといった期待も高まり、遠隔医療は4Kや8Kの高精細画像の伝送、人工知能などの新技術とも結び付き、医学の最先端のようにみなされるようになった。その一方で遠隔医療によって「何ができるのか」「本当に役に立つのか」「遠隔での診療行為が診療所や病院の業務と競合しないか」などと不安を持つ人も医師を中心に少なくない。また、どの程度普及しているのか、実態もよく分かっていない。遠隔医療の全体像を捉えた議論はまれで、実態を知る人はとても少ない。遠隔医療に対する医療界の認識はこのようなものではないだろうか。
■遠隔医療が有効なステージとは
日本遠隔医療学会のホームページでは、遠隔医療(Telemedicine and Telecare)を「通信技術を活用した健康増進、医療、介護に資する行為」と定義している。これだけでは具体的な医療行為をイメージできないが、すべての医療行為に遠隔医療が適用され得るので、今後の可能性を閉じない定義として、このように表現している。単純に言えば、「通院もしくは入院していない患者に対する医療行為」である。
最大の疑問は「遠隔から情報通信を使って医療行為が可能なのか」だろう。触診はできない、手術や注射もできない、CT撮影や血液検査もできないなど、医療としては物足りなく感じる。しかし診断が確定している患者に、遠隔医療を通じて薬の服用忘れを防いだり、生活習慣の改善を促したりするなど、通院せずに可能な治療も一部にある。
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次回は8月1日12:00配信予定です
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