【社会医療法人財団董仙会 本部情報部長 山野辺裕二】
前回も触れましたが、わが国の医療IT戦略では「遠隔医療」が繰り返し出てきます。遠隔医療は大きく2つに分けられます。放射線専門医がへき地医師の読影をサポートするようなD to D(Doctor to Doctor)による遠隔医療支援と、医師が患者を診療するD to P(Doctor to Patient)による遠隔診療があります。今回は課題の多いD to Pの遠隔診療を取り上げます。
■初診での遠隔診療は可能なのか
厚生労働省は2015年8月の通知で、遠隔診療が容認される場面として「離島やへき地の患者」を挙げたのは、例示にすぎないと指摘しました。つまり、都市部でテレビ電話などを用いて診療することについて特に制限するものではないとの認識を示しました。これを受け、幾つかのITベンチャーなどが「忙しい中で医療機関に行かなくても、スマートフォンで診察を受け、薬がもらえる」といったサービスを立ち上げました。しかし、対面診察は不要という誤解が広がったことから、厚労省は16年3月、対面診療を行わず遠隔診療だけで診療を完結させるのは医師法20条違反かという東京都の照会に回答する形で、違反と認める通知を出したことから、事態はいったん落ち着きました。
それでも、「遠隔医療」で検索すると広告がずらりと並び、「遠隔医療スタートセミナー」などの案内が送られてくる状況です。
ここで気になるのは「初診での遠隔診療は可能なのか」という点です。まず、まったくの初診で遠隔診療を行い、医師が患者に「心配要りませんよ」と回答したり、「お薬を処方しますね」と対応したりすれば、通知にある「診療の完結」に当たるので、違法となります。ただ、遠隔診療をする医師が、患者の対面診療をしている医師から、十分な病歴や処方歴などの情報を提供されているのであれば、「遠隔診療のみで完結」には当てはまらず、紹介状やEHRやPHRなどの電子健康記録による情報共有が十分であれば、初診からの遠隔診療は可能と考えられます。
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次回配信は6月23日5:00の予定です
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