【千葉大学医学部附属病院 副病院長・病院長企画室長・特任教授 井上貴裕】
入院期間の短縮が進み、各病院が新入院患者の獲得に動く中で、救急に注力する病院が増加している。2016年度診療報酬改定で「重症度、医療・看護必要度」の評価項目に救急搬送後の入院が加わったのも後押ししているのだろう。そうなると、“たらい回し”のような現象は起こらなくなるだろう。救急に注力する方針は、新入院患者の獲得に短期的に効果を及ぼすだけでなく、地域医療を支えるという意味でも間違っていない。
しかし、この連載でも言及してきたように、救急患者は予定入院患者よりも25-30%程度入院診療単価が低くなり、入院後半には診療密度も下落する傾向が見られる。これには、高齢者の緊急入院は入院期間が長く、手術実施率が低いことも影響している。救急に取り組むからには、地域連携を強固にし、後方病院を確保することが極めて重要である。
皆が救急に取り組んでいるためか、16年度診療報酬改定では救急医療管理加算1は評価された一方で、救急医療管理加算2の評価が引き下げられ、各地域で査定が増加している。これには、“はしご外し”のような意味合いがあるのかもしれない。救急医療入院の割合は病院によって大きく異なっており、中には軽症患者に対し、救急医療管理加算を算定し過ぎているケースもあるだろう。ただ、いつ来るか分からない救急に医療資源を投入するのには多大なコストが掛かる。救急医療入院の評価を厳しくし過ぎれば、地域医療の崩壊を招きかねない。
本稿では、救急車搬送入院件数で全国トップ30の病院の救急医療入院の状況を見つつ、これからの救急医療入院の在り方に言及する。
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次回配信は5月8日5:00を予定しています
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