訪日外国人に受診を推奨する「ジャパン・インターナショナル・ホスピタルズ」(JIH)の第一弾として、全国で28病院が選ばれた。13病院と最多の東京都では、大学や研究センターの病院が半数超を占めるが、民間の病院なども名を連ねている。病院側が外国人患者への対応を進める背景には何があるのか―。独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)が運営する東京高輪病院(港区)を取材した。【敦賀陽平】
都によると、1月1日現在、東京の在留外国人の数は48万6346人。これを国・地域別で見ると、中国が38%とトップで、次いで韓国(18%)、フィリピン、ベトナム(いずれも6%)などと続く。こうした傾向は23区全体でも変わらないが、港区に限ると、米国の割合が10ポイント以上高くなる=グラフ=。
実数を見ても、港区在住の米国人の数は3075人と都内で最も多く、東京全体の2割近くを占める。区の担当者は「米国大使館があることや、外資系企業が多いことなどが考えられるが、理由はよく分からない」としているが、東京高輪病院では以前から、英語の通訳が必要な患者の来院が多かったという。
こうした中、同病院は2015年2月、医事課内に「国際係」を立ち上げ、英語と中国語による案内支援を始める。病院周辺にはロシアの通商代表部もあり、ロシア人の来院も多いため、その後、ロシア語に堪能な職員1人を新たに採用し、国際係は同年秋に「国際部」として独立した。
■専門部署の設置、JCHOへの移行も影響
外国人患者の支援に乗り出した理由の一つが、外国人旅行者の増加だ。観光庁が3日に発表した宿泊旅行統計調査の速報値によると、昨年の外国人の宿泊者数は4594万6560人で、現在の調査方法に変わった10年以降、過去最高を更新した。このうち、東京には939万5460人が宿泊しており、この6年間で2.1倍となっている。
東京高輪病院は、品川駅から徒歩10分という好立地にある。羽田空港までのアクセスも良いため、周辺には有名ホテルも建ち並ぶ。外国からの旅行者やビジネスマンの増加に伴い、ホテルの宿泊客の来院も多くなっている。15年2月-昨年12月に来院した外国人患者の国籍は92カ国に上り、年々、国籍の多様化が進んでいるという。
「20年の東京五輪・パラリンピックに向け、外国人のさらなる増加は避けて通れない。これまでは英語が話せる職員でしのいできたが、何か手を打たなければ持たないという話になり、専門の部署を立ち上げることになった」。医事課長を兼任する国際部の島津忠司さんはこう振り返る。
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