【日本医業経営コンサルタント協会 東京都支部 中小病院研究会 外山和也】
働く人のライフステージに合わせた巧みな仕掛けにより、人の引き付けに成功している中小病院がある。
一般的に中小病院では潤沢に人材を集めることは難しく、病院にとって人材、とりわけ「人財」が抜けてしまうダメージは計り知れない。言ってみれば、「無形固定資産」が突然に失われてしまうようなものだ。モノであれば、資金さえ手当てできれば手に入れることができるが、ヒトではそうはいかない。どこの病院でも、ヒトが最も重要だと考えて戦略は立てるものの、現実としてはさまざまな制約があり、なかなかそれを実行していくことは難しい。
今回紹介する3つの病院の素晴らしいところは、「中小病院にとっては少々ハードルが高いと思われること」でも、必要とあらば実現させてしまうところにある。
■「複線型人事制度」の導入-40歳代のライフステージ
まず紹介するのは、「複線型人事制度」を導入した病院の事例である。
「複線型人事制度」とは、その名が示すように画一的な人事制度ではなく、複数のコースを並立させた人事制度のことだ。通常、「複線型人事制度」では、「ライン」「マネジメント」(管理職)のコースを選択するか、「スタッフ」「スペシャリスト」を選択するかは、大体25歳から30歳くらいで決めるものと思われる。
ところが、この病院の制度がユニークなところは、その選択ポイントを40歳に設定したことにある。
なぜ40歳なのか-? 40歳ともなれば、専門職として一通りの業務を経験している。それを踏まえ、よく考えてもらった上で、この先は「マネジャー」としての道を歩むのか、「スペシャリスト」としての道を究めるのかを選択してもらう方が、組織運営上うまくいくのである。
従来は「ところてん方式」で年功序列、年齢の順番に管理職を決めていたが、本人の適性の問題もあり、必ずしもそれがうまく機能しなかったという、苦い経験に基づいて作り上げた仕組みなのである。
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次回配信は4月11日5:00を予定しています
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