2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、厚生労働省は3月1日に、医療施設の「敷地内禁煙」などを盛り込んだ受動喫煙防止のための強化策の原案をまとめた。それによると、老人福祉施設は「屋内禁煙」とし、建物内の喫煙室の設置も認められない。ただし、一人部屋(個室)については、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)といった施設の種類を問わず、規制の対象外とされている。
この問題については、塩崎恭久厚労相が昨年10月14日の記者会見で、「WHO(世界保健機関)によると、日本の対策は世界最低レベル。日本は『スモークフリー社会』への歴史的な一歩を踏み出さなければいけない」と意欲を見せていたこともあり、かなり厳しい規制になっている。
■「個室のみ喫煙可」が生む不公平と余計な手間
建物内の喫煙室の設置も認めないとされた今回の決定により、多床室しかない特養などは、建物内でたばこを吸えないことになる。個室・ユニット型の特養では、全室で喫煙可能なのに、従来型施設となると、個室利用の方しか喫煙できないという不公平な状況が生じるわけだ。
さらに、この原案がそのままルール化されると、現在喫煙コーナーを設けている個室のある介護施設でも、コーナーでの喫煙は禁止され、個室で喫煙してもらうことになる。つまり、個室内で火を使うことを推奨するわけだから、防火のための見守り対応などで、職員の手間は今以上にかかることになる。非常におかしく、そして危ない話である。
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