【多摩大学医療・介護ソリューション研究所 フェロー 石井富美】
日本が健康先進国になるため、今後20年ですべきことを提言した「保健医療2035」では、「リーン・ヘルスケア(保健医療の価値を高める)」「ライフデザイン(主体的選択を社会で支える)」「グローバルヘルスリーダー(日本が世界の保健医療を牽引する)」の3つのビジョンを掲げています。二つ目の「ライフデザイン」には、今後の地域包括ケアシステムの在り方が示されています。
保健医療2035では、「ライフデザイン」について、「人々が自ら健康の維持・増進に主体的に関与し、デザインしていく」のと同時に、「健康は個人の自助努力のみで維持・増進できるものではなく、個人を取り巻くさまざまな環境、いわゆる『健康の社会的決定要因』を考慮する必要がある」としています。
つまり、市民が「自ら選択」できるよう、一人一人のヘルスリテラシーを向上させたり、意思決定をサポートするための仕組みが重要になります。このような「意思決定」が目指す先は、リーン・ヘルスケアと同様、医療の効率化や医療費の削減であり、重症化予防を見据えた「健康への投資」による生活の質の向上と生産性の向上が挙げられています。
このような方向性は、病院側から見れば、保険収入の減少につながるものの、今後は予防分野の充実や健康増進、啓蒙活動など、保険収入だけに頼らない経営体質に転換していくことが求められるでしょう。
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