【千葉大学医学部附属病院病院長企画室長・病院長補佐・特任教授 井上貴裕】
1.病棟薬剤業務実施加算届出に必要な薬剤師数
病棟薬剤業務実施加算は、病棟専任の薬剤師が病棟薬剤業務を1病棟1週間につき20時間相当以上実施している場合を評価するものとして、2012年度診療報酬改定で設けられた。この20時間は主に持参薬の鑑別に充てている医療機関が多いようだが、後発医薬品が台頭し、かつ高齢者において多剤の持ち込み薬が多い現実からして、医療安全の面からも極めて重要な業務である。なお、当該加算は安全性の向上に寄与するだけでなく、医薬品の廃棄を防止することにもつながる。加算単独の収益性のみにとらわれることなく、積極的な届け出が期待される。
=グラフ1=は全国の病棟薬剤業務実施加算の届け出状況であり、増加傾向にある。しかし、届出のためには手厚い人員配置が求められるため、そのハードルをクリアできない医療機関は少なくない。当該加算を届け出る薬剤師数の目安は100床当たり4人以上となるだろう。シフト制などの勤務形態、院外処方率、1病棟の病床数、特定入院料算定病床数、さらに外来化学療法件数、治験の実施状況など、個別の要因に左右される部分はあるにせよ、200床ならば最低8人、400床だったら最低16人の薬剤師が一般的には必要になる。
もちろん薬剤部として業務を整理し、看護部等との役割分担を適切に行うことによって効率的な届け出が可能となることだろう。さらに、有資格者ではなく、補助者を配置することにより、薬剤師にしかできない業務に注力するための体制を検討することも必要である。ただ、現実は100床当たり5人程度でないと、届け出に至らない医療機関も多いようだ。
次回配信は10月17日5:00を予定しています
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