介護のリスクと費用を早めに知っておく-。経済産業省の研究会が昨年度末に公表した報告書※では、65歳で年金を受給してから亡くなるまで、どのくらいの費用がかかるのかシミュレーションし、若いうちから老後に直面するリスクを認識したり、生涯設計を考えることを促している。医療・介護従事者もいつかは介護サービスの利用者。どれくらいの費用がかかりそうか、つかんでおこう。【大戸豊】
研究会では当初、生涯未婚の人などが単身のまま高齢者になった場合、どのような介護需要があるのか、介護保険サービス以外に、自助努力の観点から、どのような仕組みが考えられるのかもテーマとなった。
経済産業省産業構造課の前田翔三課長補佐は、ある程度若いうちから、自分が高齢者になったらどのような生き方があり、どれくらい費用がかかるのかを知ってもらうために、大まかなシミュレーションを行ったという。
■経産省研究会が4つのオプションで老後にかかる費用を試算
シミュレーションは、65歳から厚生年金を受給し、“持ち家”で暮らすことが前提。男性は79歳で要介護状態に入り、84歳で死亡。女性は84歳で要介護、89歳で亡くなることを想定している。
厚生年金の受給額は、単身世帯で月14.7万円、夫婦世帯で月20.2万円(夫の死別後は、国民年金〈月5.4万円〉と遺族年金〈月8.2万円〉)を想定している。
自宅での生活費などの支出(要介護状態になる前)は、単身世帯月15.5万円、夫婦世帯26.5万円で試算している=表=。要介護状態になれば、介護保険サービスの自己負担分が増えるほか、例えば、特別養護老人ホームに入居すれば、住居費をはじめ、食費や水道・光熱費なども変化する。
表 要介護認定を受ける前の支出
厚生労働省「平成26年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」、総務省「家計調査」より経済産業省が作成。その他の支出は、「交通・通信」「教育」「教養娯楽」「その他の消費支出」「非消費支出」の合計
シミュレーションでは、要介護状態になってからの4つのオプションを示し、それぞれ単身世帯・夫婦世帯でどれくらいの貯蓄や資産が必要になるかを試算している。
(1)生涯在宅で過ごす(訪問介護と通所介護を利用)
(2)要介護2まで在宅(訪問介護と通所介護を利用)、要介護3以降は特養で過ごす
(3)要介護1からサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で過ごす
(4)要介護1から有料老人ホームで過ごす
次回配信は8月5日12:00を予定しています
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