高齢者向けサービスの新たな市場、介護保険外事業の開拓者たちを取り上げるシリーズ「介護ビジネス新大陸」。今回、紹介するのは、「学校形式のサービス」という独自メソッドをほかの介護事業者らに販売する「株式会社おとなの学校」(東京都千代田区)だ。ほかとの差別化を図りたい事業者らの需要にマッチし、この1年余りで急速に売り上げを伸ばしている。【烏美紀子】
全国展開の旗艦施設となった南青山校。ある日の朝礼は、今夏の参院選の話題からスタートした。
「投票には行かれましたか?」「有権者の年齢は何歳からになったでしょうか」という“先生”の問いに、“生徒”たちは「いつも行ってるよ」「えーと、18歳!」と活気づく。出欠確認、校歌斉唱と続き、日直が号令をかけた。
「起立、礼」
足の悪いクラスメートを手助けしながらのあいさつ。チャイムの鳴る中、1時間目の授業「国語」の準備を始める教室のざわめきは、本物の学校そのままだ。
おとなの学校では、利用者が生徒、スタッフが先生となり、「学校生活」になぞらえた時間を過ごす。利用者の要介護度はさまざまで、重度認知症の人も少なくない。「国語」「算数」「理科」「社会」など30分単位の授業が行われ、メリハリのある一日が組み立てられている。
例えば、「社会」。歴史をテーマにした授業では、教科書の年表に沿って家電の移り変わりを話し合う。初めて街頭テレビを見た日のこと、好きだったテレビ番組、黒電話の掛け方-。それぞれの思い出に共感し、若い“先生”に当時のことを教えてあげる。「算数」も、単に問題を解いて脳トレーニングをするのではなく、京都への旅行代金を計算したり、居酒屋のメニューを見ながら注文やお勘定をしたりと、活発な雰囲気に包まれて授業は進む。
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