【元国際医療福祉大学大学院准教授 石川雅俊】
1. はじめに
東京大学公共政策大学院医療政策教育・研究ユニット(HPU)は、3月13日に「地域医療構想から次期医療計画へ~需給ギャップを克服し、アウトカムを達成する~」と題して公開シンポジウムを開催した。シンポジストとして厚生労働省地域医療計画課の迫井正深課長や日本病院会堺常雄会長などのキーパーソンが出席し、140人が参加した。
私は、2014年よりHPUの自主的研究活動である「地域医療計画実践コミュニティ」に参加し、「地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン」(同コミュニティ作成)の策定に関与してきた。また、前述のコンペでは、企画委員会の委員として、データベースの構築を含め、企画に関与するとともに、「病院の機能分化の状況を地域単位で測定する新規指標の検討」というテーマで応募し、優秀賞を受賞した。記事では、今回応募した内容について紹介する。
※病床機能報告制度に基づき、各都道府県のホームページに公開されたデータやその他の各種公開情報を基に、HPUが作成・公開したもの。シンポジウムの講演資料や要旨、データベース、コンペ抄録集などについては、 こちらで 公開されている。
2. 背景と目的
医療の機能分化が進められているが、機能分化の定義は多様であり、評価は難しい。
機能分化は、「垂直方向」と「水平方向」に分けて考えられる。
「垂直方向の機能分化」は、高度急性期から急性期、回復期・亜急性期、慢性期、在宅医療や外来・予防医療など、患者ステージに応じて、医療機関の医療機能を設定し、地域全体で医療機能を分担するイメージだ。
一方、「水平方向の機能分化」は、各医療機関が、特定の医療機能(診療科、治療等)について、それぞれ集中・差別化を図りながら、強みのある機能に応じて地域医療に貢献することだろう。
機能分化の状況は、「垂直方向の機能分化」であれば、地域医療構想策定ガイドラインで示された機能別病床数の試算を行い、その過不足を地域単位で測定することが考えられる。他方、「水平方向の機能分化」では、地域単位の定量的な指標設定や測定が、十分に行われているとは言えない。
以上を踏まえ、病院の「水平方向の機能分化」について、地域単位で測定する新規指標を検討した。
指標は、(1)各医療機関が医療機能の集中・差別化を図っているか(2)地域単位で医療機能の集約化・重点化が図られているか(3)地域単位の集約化・重点化によって診療アクセスの悪化が生じていないか-の3つの視点で検討した。
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