【南砺市民病院前院長、南砺市政策参与・地域包括医療ケア部地域包括ケア課顧問 社会福祉法人福寿会副理事長 南眞司】
認知症を支援する体制構築のあゆみ
2004年11月に合併して誕生した南砺市では、行政と専門職などが協力し、認知症の人と家族が安心して暮らせるまちづくりに取り組んできた。そして、14年には「一人暮らしの認知症の方が笑顔で暮らせるまちづくり」を宣言し、取り組みを充実させている。
「まちづくり」宣言前の取り組み
(1)もの忘れ外来の開設
南砺市民病院では、05年4月に認知症診療の一環として、内科に「もの忘れ外来」を開設した。在宅での支援を目的に、医師は疾病、臨床心理士は障害※1について、作業療法士は生活課題を評価し、解決策などを提案している。年間で100事例ほどの診療報告書を、主治医や介護支援専門員へ送付しており、このような取り組みが、地域の認知症対応能力の向上に寄与していると考えている。
※1 記銘力を含めた認知機能評価とうつ傾向やBPSDも含めた精神的な障害を評価し、認知症の重症度判定も行う
(2)認知症初期集中支援チームの構築
南砺市民病院では、12年度に全国国民健康保険診療施設協議会(国診協)による「認知症初期集中支援チーム」のモデル事業に参加し、訪問調査や支援を行った。そして、13年9月には、南砺市直営の地域包括支援センターと当院や地域の医療機関や介護事業所が協力し、初期だけでなく、急性増悪期にも対応できる「集中支援チーム」を設立した。
さらに14年度には、認知症の進行度合いに応じたケアや生活支援などに活用する「認知症ケアパス」を作成。認知症の人と家族の生活を支援するため、保健師、社会福祉士、作業療法士等が自宅を訪問し、本人や家族から話を聞いたり、自宅内外の環境を確認したりする。そして、本人の状況と課題を確認し、介護家族の思いや負担感も評価しながら、生活状況を踏まえた支援方法を提案する。一回の訪問だけでなく、地域包括支援センターで支援を継続している。15年度には8人に対応している。
(3)認知症カフェでの支援
14年4月には、地域包括支援センターが認知症カフェ「ともいきカフェ」を開設した。南砺市旧4町と五箇山の5カ所において、それぞれ月1回ボランティア等の協力も得てカフェを開催し、認知症の人と家族の支援を継続している。
(4)住民への啓発活動「コントDE健康」
02年度から南砺市民病院の職員が、コントを通じて住民向けに健康の啓発活動を行っている。市民も面白く分かりやすいと関心を示し、今年4月までの啓発活動は228回を数えた。現在は、南砺市全体の医療職が地域に出向いており、「認知症の巻」というコントを通じ、認知症への理解と対処方法を啓発している。
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