【医療法人財団暁あきる台病院企画室長・副院長 井村健司】
前回は、療養病床が置かれている環境や立場を整理しました。第2回は、財源がない中で医療・介護に従事するわれわれはどのように収入を確保し、社会を支えていくのか、その具体像を考えます。
そもそも、「金はない、任せるので各自努力してほしい」というのが、地域包括ケアシステムの端緒と趣旨です。国からすれば、頑として言うことを聞かなければ「だったらお前ら自分で全部やってみろ」と言いたくなるのも理解できなくはありません。
自治体は自ら稼ぐことはできません。私たち民間の提供者側が動いて稼ぐのです。それには、自らの使命や存在意義を理解し、目的や目標を定め、計画的に実行するしかありません。
“療養”は、もはや療養病床だけの役割ではありません。
「素早く治して出す」という従来の医療だけでなく、“在宅”で支えることが求められます。そして、希少資源である救急を有効に使うことです。「慢性期救急」まで登場したのは、介護で生じる医療ニーズを自分たちがカバーしなければ、全体が持たないという危機感でした。
慢性期病院としては残せないが、療養病床が自分たちで意義を考え、役割を果たせというのが国の真意です。つまり、生活を支えろ、自分の食い扶持は自分で稼げというわけです。その範囲は生活のあらゆるシーン、人の生老病死に及びます。
私は「地域包括ケアシステム」について、保健・医療・介護・福祉・行政サービス・その他サービス・自助等の一体的なネットワークによって、少ない財源や資源の不均衡の中で、大きな変動に耐え抜くためのサービス群・集合体であると理解しています。
ここには「すべての資源を使い倒して持ちこたえろ」というメッセージがあります。
医療だけでも、介護だけでも、保健や福祉を含めてもまだ足りない。主に大都市で高齢者が生活を続ける上での困難を軽減するには、療養病床の枠などを取り払い、できることは全部やるという決意が必要になります。
■環境整備と在宅の展開、脱保険ビジネスの積み重ねがカギ
医療と介護は在宅の環境の整備が得意ではありませんでした。退院させたり、在宅に移る上で必要な環境を整備するための技術を身に付けましょう。つまり、在宅生活の土台となるもろもろを、税や保険の範ちゅうを越えて届けるのです。
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