【千葉大学医学部附属病院病院長企画室長・病院長補佐・特任教授 井上貴裕】
2016年度診療報酬改定では、7対1の絞り込みに強く焦点が当てられており、多くの急性期を志向する病院はその議論の動向から目が離せない。
最も重要な論点は「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)である。項目が大幅に見直され、現行の基準値も15%から25%に引き上げられる見通しだ。基準が厳格化されたとしても、重症者に対して適切な急性期医療を提供する病院を評価するのであれば、その方針には納得せざるを得ない。しかし、“重症度、医療・看護必要度”とは名ばかりであり、重症度や看護必要度の実態を反映していないのが現実だ。
例えば、A項目に「無菌治療室での治療」が追加される見通しだ。血液内科の評価が低い現状からすれば妥当であり、大きな反論もないだろう。ただ、改定ごとに看護必要度の項目を入れ替えるのは、「今までの項目が妥当でなかった」と宣言しているのに等しい。現場は、看護必要度の基準や項目の変更に大きく左右されるが、この4月から“重症者”の定義がまた変わってしまう可能性が高いわけだ。
制度が実態に合うように柔軟に変更する視点は欠かせないと思うが、場当たり的ではなく、本質的な対応を望みたい。
2 改定で7対1は減るのか?
私は看護必要度の基準値が25%に引き上げられても、7対1が激減することはないと予想する=図1=。基準値がそれほど厳しいわけではなく、いかようにもクリアできる余地が残るからだ。その代表がA項目に追加される救急車搬送だ。救急患者を入院させるための現場の負荷は大きいが、そのことが必ずしも適切に評価されていなかった。
次回配信は2月1日5:00を予定しています
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