【国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部主任研究官 熊川寿郎】
2014年7月31日に厚生労働省は「平成25年簡易生命表の概況」を発表した。これは、日本にいる日本人について、平成25年の1年間の死亡状況が今後変化しないと仮定した時に、各年齢の人が1年以内に死亡する確率や、平均してあと何年生きられるかという期待値などを、死亡率や平均余命などの指標によって表したものである。0歳の平均余命である「平均寿命」は、すべての年齢の死亡状況を集約したものであり、ヘルスケアシステムの水準を総合的に示す指標である。
平成25年簡易生命表によると、男の平均寿命は80.21年、女の平均寿命は86.61年と、前年と比較して男は0.27年、女は0.20年上回った。男は初めて80年を超え、そして男女とも過去最高を更新した。また、平均寿命の男女差は6.40年で、前年から0.07年減少した。国別平均寿命を見ると、日本は男女とも世界でトップクラスとなっている。平均寿命が延びたのは、性・年齢別に見た死亡状況の改善によるもので、死因別に見ると悪性新生物、心疾患(高血圧性を除く)、脳血管疾患および肺炎の死亡状況の改善が大きい ※1 。
日本においては第二次世界大戦以前から、年金保険および医療保険制度が運営されてきたが、農業従事者や自営業者などのインフォーマルセクター(経済活動において公式に記録されていない経済部門のこと)の一部は未加入にあった。そして、戦後の高度経済成長の過程において、インフォーマルセクターの問題を解消すべく、1961年に年金および医療の国民皆保険を達成した。また50年代に始まった結核対策により、50年代から60年代初頭の伝染性疾患による死亡率は急速に低下し、さらに60年代に始まった血圧などの主要リスク要因の管理により、脳卒中の死亡率も大幅に減少したことから、わが国の平均寿命は極めて短期間に改善した。
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