【相談支援センターこすもす所長・りべるたす株式会社代表取締役 伊藤佳世子】
もう10年近く前になりますが、私は筋ジストロフィー病棟で介護職として働いていました。入院患者さんたちは、幼い時から20年とか30年もの間そこで療養され、多くの方が退院することなく亡くなられました。一度入院したらそこから出られないのではないか。そんな印象を私は持っていました。
その時の私は素朴な疑問として、「なぜ生活の場として病院を選んだのか」「家で暮らそうとは思わないのか」と思い、実際に長期療養の患者さんの何人かに、そこで療養し続ける理由を尋ねてみたことがあります。中には、私と同じくらいの年齢(30-40代)の方もいらっしゃいましたし、貧血の薬を飲んでいるくらいで治療らしい治療をほとんど受けていない方もいらっしゃいました。私からすれば、病院は治療が終われば退院する所なのに、継続的な治療をしている様子がない方が入院されていることが不思議に感じられました。
最初、患者さんたちはかたくなに口を閉ざしていました。しかし、関係性ができてくると、徐々に重い口を開いて教えてくれました。そして、いろいろ話を聞いてみて、家族の介護力や家の立地条件など、家に帰る態勢が整わないために、本当は帰りたいけれど帰れないということが分かってきました。
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