【東京医科歯科大学医学部附属病院病院長補佐・特任准教授 井上貴裕】
戦略的病院経営を推進する上で外部環境や競争状況について把握する方法はすでに取り上げた。本稿では自院の内部資源を見誤ることなく、“高機能”であるかどうかを客観的に評価するための“切り口”を紹介する。
外部環境を踏まえて決定する自院のポジショニングは、ヒト、モノ、カネ、情報といった内部資源が重要であり、そこが優れているからこそ差別化が図れる。しかし、自院の資源を楽観的に評価する傾向は強く、多くの病院で急性期志向を強めているが、そのことが結果として地域連携を阻害している。自院の内部のことであり、“なりたい姿”ばかりが目に浮かぶことはやむを得ない。しかし、“なりたい姿”ばかりを追い求めても、地域医療の最適化は図れない。
病院の貸借対照表の「資産の部」で目立つのは有形固定資産であり、多くは建物や土地、さらに高額な放射線機器などで構成されている。しかし、それは財務会計的に評価される資産であり、過去の支出の結果を示したものに過ぎない。過去に割高に購入していれば資産価額は多くなるが、将来の価値を生み出すとは限らない。有形固定資産が多いことは将来の足かせにすらなりえる。本当に大切な財産は、“ヒト”であり、優秀な人材なくして病院は成り立たない。とはいえ、優秀かどうかの評価軸もさまざまであり、“神の手”といわれるスーパードクターの力量でさえも、内部では賛否両論だったりすることもあり、人的資源の評価は容易ではない。しかし当然ながら、病院機能に人的資源が与える影響は強い。
ここでは、職員数という量的側面と診療科構成などの質的側面から“高機能”について考え、医療機関が自院の機能を検討する際の素材を提供する。
次回配信は4月13日5:00を予定しています。
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