外来医療の機能分化を進めるため、大病院に紹介率・逆紹介率の引き上げを促すといった施策が続々と講じられる中、国保旭中央病院(千葉県旭市、989床)の吉田象二・事業管理者(※)は、連携先の確保に頭を悩ませる。吉田氏は、医療資源の乏しい地域などで、全国一律の外来機能分化の方策に対応するのは限界があると指摘。今後、都道府県ごとに策定される地域医療ビジョンに基づき、地域の特性に合わせた施策が講じられるよう期待している。【佐藤貴彦】
外来医療の機能分化は、医療保険制度のフリーアクセスの基本を守りつつ、限られた医療資源を効率的に活用するのが狙い。再診患者の外来診療に忙殺される大病院勤務医の負担軽減につながるといった指摘もある。政府は新たな施策として、紹介状を持たずに大病院を受診する初診患者などを対象に、窓口負担に加えて一定額の支払いを求める新制度を導入する方針だ。
もちろん診療報酬上にも、外来機能の分化を進める施策が盛り込まれている。
2014年度診療報酬改定では、大病院の連携先となる中小病院や診療所の主治医機能を評価するために、再診料の加算「地域包括診療加算」などを創設。併せて、12年度の前回改定で導入した、紹介率と逆紹介率が低い大病院の減算ルールを拡充させた =図、クリックで拡大= 。
■紹介率などの減算で10億円減収の懸念
大病院の減算ルールが導入された当初、対象病院は、特定機能病院と、一般病床500床以上の地域医療支援病院だった。
1000床近い病床を有する国保旭中央病院は、隣県・茨城も含む13市7町を診療圏とし、一日平均2500人超の外来患者が訪れる。中小病院とは考えづらい同病院だが、これまで減算ルールの対象となる大病院に含まれていなかった。患者の紹介と逆紹介の実績に関する要件がネックとなり、地域医療支援病院の承認を受けていないからだ。
しかし14年度改定では、地域医療支援病院・特定機能病院以外で、許可病床500床以上かつ一般病床200床以上の病院を、減算ルールの対象に追加。前年度の実績で、紹介率(初診患者に占める紹介患者と救急患者の割合)4割以上か、逆紹介率(初診患者に占める逆紹介患者の割合)3割以上のどちらかをクリアしなければ、基本診療料などが減算されることになった。
このルールは、14年度の実績を基に15年度から適用される。14年度改定の概要が明らかになると、国保旭中央病院はこの影響を試算した。「10億円くらい減収するという結果で、最低ラインを確保しなければと必死になりました」と吉田氏は振り返る。
■減算回避へ、受付の前に逆紹介の窓口設置
国保旭中央病院の紹介率の10年度からの推移を見ると、35.24%、35.87%、37.64%と年々増加。13年度は40.04%で、減算回避の基準となる4割を超えた。一方、逆紹介率は20.37%(10年度)、25.74%(11年度)、27.45%(12年度)、26.79%(13年度)と、3割未満にとどまっていた。
減算が適用されれば、病院運営に支障を来しかねない。吉田氏は、14年春から紹介率・逆紹介率を高める施策の強化に乗り出した。
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