【株式会社ファレッジ代表取締役 深井良祐】
薬局の薬剤師であれば、処方せんを持って訪れた患者には必ず「お薬手帳はありますか?」と聞くだろう。お薬手帳の活用は、患者が思っている以上に大きな効果を期待できるからだ。しかし、このお薬手帳、開発当初は無料だったが、現在では発行にお金がかかるようになった。その自己負担額は20円。そのためか、「薬局でお薬手帳を断ると支払額が安くなる」というテクニックが出回っているほどだ。では、それで本当に自身の健康を守れるのであろうか。
そもそも、なぜお薬手帳が重要視されているのか。そのことを、薬剤師側は当然ある程度認識しているにしても、患者側が詳しく知っているとは限らない。そこで、今回はお薬手帳の役割や歴史について述べ、患者に伝えるべきポイントを説明していく。
現在では全ての薬局で活用されているお薬手帳だが、かつてはそのようなアイテムはなかった。そのため、過去から現在にわたって服用している薬を調べたり、ほかに受診している医療機関などの情報を入手したりするためには、薬局窓口で行う口頭での聞き取りしか方法はなかった。しかし患者が全ての医薬品の名称を覚えていることはほぼないため、あいまいなことしか分からないのが実情だった。
しかし、多くの薬を併用していたり、複数の医療機関を受診したりする患者は多い。そのような時、薬が重複することは頻繁にある。薬によっては、併用によって副作用のリスクが高まったり、薬の作用を減弱させてしまったりする恐れがある。
例えば、薬害として有名な「ソリブジン事件」がこれに当たる。抗ヘルペス薬「ソリブジン」と抗がん剤「フルオロウラシル(5-FU)」を併用した患者で、抗がん剤の作用が強く出過ぎたというものだ。これにより、白血球減少などの血液障害や重篤な消化管障害を引き起こし、多数の死者を出した。
次回の記事配信は、2月17日5:00を予定しています
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