認知症の高齢者は12年時点で推計462万人に上り、軽度認知症を含めると800万人を超えるといわれる。認知症のケアはもはや介護施設や事業所、療養病院だけのテーマではなく、急性期病院にも必要になっているだろう。
医療、介護従事者は日々時間に追われる中で患者や利用者に対応しているかもしれない。ただ、認知症の人はせわしないことを受け入れるのが難しく、今いる場所が分からなかったり、誰と話しているのか分からなくなることもあり、不安の中にいる。
特集では、医療、介護を必要とする高齢者が今後増えていく中で、4つの認知症ケアを取り上げながら、あらためて現場での対応方法を考えてみたい。
1回目は「バリデーション」を取り上げる。【大戸豊】
バリデーション(validation)は、米国のソーシャルワーカー、ナオミ・ファイル氏が生み出した認知症の高齢者とのコミュニケーション法だ。
関西福祉科学大の都村尚子准教授は、研修などを通じてバリデーションを普及させてきた。日本に紹介されてから十数年が経ち、認知度が高まってきたという。これまでは高齢者福祉施設の介護職による受講が多かったが、ここ1、2年は看護師などの医療職の参加が増えている。都村氏は、認知症の人にコミュニケーション障害が生じた場合、現場は対応したくても、そのための方法が分からないのではないかという。
都村氏はこれまでのケアは、認知症の高齢者の気持ちにふたをしてきたのではないかと疑問を呈する。本人が不満や怒り、悲しみといったマイナスの感情を訴えても、「静かにして」「怒らないで」「泣かないで」などと、気持ちを抑えさせてきたので、むしろ感情を爆発させてしまっているのではないか。
バリデーションは、認知症の人の感情のレベルに訴えるアプローチといい、ケアする側は感情を抑え込むのではなく、「感情を出して大丈夫ですよ、わたしたちが受け止めますよ」と伝え、安心して感情を表出してもらう方法だという。
次回配信は12月9日5:00を予定しています。
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