【合同会社医療介護連携研究所 久保美穂子】
どこでも言われていますが、多職種連携のためには「顔の見える関係」が一番大切ではないでしょうか。在宅医療で言えば、医療や福祉・介護との「face to face」の関係です。でも、わたしはそこにもう一つのface(患者・家族)も入っていなくては駄目だと考えています。「face to face to face」の関係こそが何よりも必要だと。
そして、在宅医療は、その人の人生に寄り添うものだと考えています。そのためには、医療と福祉の架け橋がしっかりと架かっており、そしてface to face to faceの関係ができていなくては人生に寄り添うことはできないと感じています。
face to face to faceの関係ができていたからこそ…、というケースをご紹介したいと思います。
食道がん末期のWさんは50歳の女性の方です。あちこちにがんが転移しており、人生で残された時間はあまりない状態でした。そのため、通院する予定でしたが、ご自宅へ帰るために在宅医療も介入することになりました。
退院前には、退院時カンファレンスが開催され、ご本人、ご家族(実の妹さん、娘さん)、病院主治医、病棟看護師、病院の理学療法士、病院のメディカルソーシャルワーカー(MSW)、在宅主治医、訪問看護師、ケアマネジャー、訪問リハビリスタッフが出席しました。退院時カンファレンスの時点では、Wさんご自身は「延命は望んでいないけれども、その時にならないと最期をどこで迎えたいのか分からない。今は緩和ケア病棟に入院かな?」といったお気持ちを言われていました。ご主人は亡くなられていたため、娘さんご夫婦と同居されていたのですが、娘さんも「自宅で最期を迎えてもらうのは、ちょっと気兼ねする…」と言われていました。
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