【東京慈恵会医科大学日本語教育研究室教授 野呂幾久子】
第2回は、医療者のコミュニケーションと満足度や安心感といった患者の情緒との関係を中心に考えていきます。
周知のように、コミュニケーションには言語コミュニケーション(verbal communication)と非言語コミュニケーション(nonverbal communication)があります。前者は言葉を媒介としたコミュニケーション、後者は言葉以外の、声(大きさ、高さ、速さ、声質、間など)、表情、視線、姿勢、距離、位置などを介したコミュニケーションです。この2つを比べると、感情や対人態度(好意、親密さ、優位性)は、言語よりもむしろ非言語の方が伝わりやすいといわれています。また、病により不安な精神状態にある患者は、医療者の非言語行動に対し非常に敏感になっています。
Bensing(1991)は、医師が患者に対して、言葉や非言語によって温かい態度を示すと患者の満足度が上昇し、特に視線を向ける、関心を示すなどの非言語行動の影響が大きいことを報告しています1)。また、医師が患者の話を聴くときに、頻繁にうなずいたり、前傾姿勢を取ったり、腕組みや足組みをしないなどの非言語行動を取ると、患者の満足度が高くなることも指摘されています2)。これらの非言語は、患者に、医療者が自分やその治療に対して温かい感情や親身で熱心な態度を持って臨んでくれているというメッセージを伝え、それが満足感へとつながっていくためだと思われます。
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