【大澤一記(日本橋人形町法律事務所 弁護士、医師)】
医療事故の損害賠償訴訟では、医療行為に過失があったかどうかがまず問題となります (民法709条) が、そもそも過失とは、どのような状況下で認められるのでしょうか。
■医師の「注意義務」を判断するもの
医師の注意義務を判断するに当たっては、未熟児網膜症事件の判例(最判昭和57年3月30日)が先例となっていて、医師が「診療当時の臨床医学の実践における医療水準に従った行動をとったかどうか」によって、過失の有無が認定されます(医療水準論)。
そして、この医療水準を決するには、医療機関の性格や、その所在地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべきとされています。すなわち、地域の医療の中核を担う医療機関などでは、治療法に関する知見・情報の普及、その実施のための技術・設備等の普及等の点で、より重い注意義務が課せられることになるのです。 次ページ>実際の判例では?
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