2012年度の診療報酬改定では、1回の来院で2つの診療科を受診する、いわゆる「複数科受診」の再診料(または外来診療料、34点)が新設される。類似の疾病による受診が対象外となるなど、一定の要件が設定されたものの、病院団体の念願がようやくかなった形だ。難易度の高い手術料が大幅に引き上げとなるなど、大病院に有利だったとされる前回の10年度改定。中央社会保険医療協議会の診療側委員で、主に中小病院が加盟する全日本病院協会の西澤寛俊会長に、12年度改定を総括してもらった。(敦賀陽平)
ネット(全体)で0.004%のプラス改定だったことは素直に評価したいと思います。これは金額の問題ではありません。勤務医の負担や医療提供体制の問題がある中、団塊の世代が75歳以上を迎える25年に向け、社会保障を維持するためにはプラスでなければならないという、現政権の気持ちの表れだと思うので、それをしっかりと受け止めたい。
―10年度改定とは異なり、改定率決定の段階で、入院と外来の配分枠はありませんでした。
これはある意味、やりやすかった。今回の改定では、勤務医の負担軽減のほか、医療と介護の役割分担や在宅医療などが重点課題として挙げられましたが、評価項目と点数だけを見ると、かなりバランスがいいと思います。例えば、在宅医療を担う中小病院や診療所、その両方にも点数が付いている。病院や診療所という線引きではなく、個別の分野をどうしたいのかが表れているのではないでしょうか。
―中小病院に不満の残る結果となった前回の改定と比べ、今回はいかがでしたか。
全体的に見れば、それほど変わっていませんが、今回はメッセージが入った改定だと思います。ただの底上げではなくて、病院の機能を明確化することで、報酬が上がる形になっている。
例えば、在宅医療をすべきなのに、今まであまり力を入れてこなかった病院であれば、それをやれば評価しましょう、と。今回、二次救急医療機関の深夜・休日における外来での初期診療を評価する「夜間休日救急搬送医学管理料」(新設)も200点(初診時)付きました。各病院が細かく対応しなければ、大幅なアップにはなりませんが、ある意味、中小病院の本来の役割を評価していると言えるのかもしれません。
前回もメッセージは入っていましたが、大病院に関してだけだった。今回は中小病院、あるいは療養病床、診療所も含めて、それぞれの機能を明確化しました。これは、あらかじめ外来と入院の配分枠を設けなかったからこそ、可能になったのではないかと思います。
■複数科受診の再診料、今後は満額要望も視野に
―病院団体が要望していた複数科受診の再診料(外来診療料)が、今回ようやく実現しました。現行の再診料(同)の約半分に当たる34点となりましたが、この結果をどのように受け止めていますか。
これが入ったことは、素直に評価したいと思います。現在2つ目の科の初診料については、今でも2分の1の報酬を受け取ることができる。仮に、再診料だけ満額となるとバランスが崩れるかもしれない。その意味では、この点数は妥当なのかもしれませんが、もし全額を求めるということになれば、当然、初診料についても、同様の対応になると思います。それは、これからの議論でしょう。
―今後、満額を要望していくということでしょうか。
まず、点数をどうするのかという問題があります。そして、もう一つは何科目まで算定可能とするのか。今回の改定では、2科目を算定する場合、一部の加算について取ることができないことになりましたが、医師の技術料として見るのであれば、それを評価してもよいのではないでしょうか。
今後、日病協(日本病院団体協議会)で具体的に検討することになりますが、方向としては、医師がプライドを持って仕事ができるよう、その技術を評価してもらうこと。必死にやって評価されなければ、精神的に疲弊してしまうでしょう。そのことを1号側(支払側)に理解してほしい。報酬が上がることとは違った視点で議論できればいいと思います。
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