医療現場などで活躍している医療情報技師の横顔に迫る新連載「病院DX推進の旗手たち」。3回目は、事務職として入職しながら、医療情報技師として活躍する特定医療法人桃仁会病院(京都市伏見区)データサイエンス部医療情報課課長の松本清美氏に聞きました。(不定期掲載)【斯波祐介】
医療情報技師の資格は、2010年にオーダリングシステムの導入に携わったことがきっかけで取得しました。普段は主にオーダリングシステムや文書管理システムの運用・管理を行っています。当院では文書管理システムとしてFileMakerを使用しているのですが、書類作成だけではなく、様々な業務の記録やデータ管理のためのツールも構築し、蓄積された情報を有効活用する仕組みも作成しています。また、一般X線装置やCTなどのモダリティー更新に携わるなど、幅広い業務を担当しています。
■小さなDXから始まる改革
当院では、医療現場も事務部門の依然として紙ベースの運用が多く残っていますが、オーダリングシステムやインターネットなど、ITは日常的に利用していますので情報セキュリティーにも十分な配慮が必要です。
これまで全体研修は集合形式で開催していましたが、勤務の都合で出席できないスタッフも多くいました。そこで、情報セキュリティー対策として誰でもできる基本的な注意点や対策に絞った10分動画を作成して、ユーチューブにアップし、限定公開にして院内職員に視聴してもらうEラーニング形式の全体研修を企画・実施しました。基本的な内容ですが、USBメモリーの取り扱い方や管理方法、PC画面ののぞき見による情報漏えい注意などを呼び掛けています。職員からは時間的拘束がなくなったと好評で、効率化が図れたので今後も継続していく予定です。
新しいツールの導入も進めています。情報共有とコミュニケーションを円滑にするためチャットツールを導入したところ、あるフロアでは導入して3日で、申し送りのために全員が集まる必要がなくなるほど業務が効率化されました。導入してまだ間がないため、単なる操作方法だけでなく、共有すべき情報の基準や情報量などについて利用者に説明する機会も多々あります。
業務の効率化、医療安全、医療の質の向上を図るため、今後数年のうちに電子カルテや透析支援システムが導入される予定です。紙ベースの業務フローを大きく見直すプロジェクトが始動しますので、プロジェクトの成功に向けて現場の声に耳を傾けながら準備を進めていきたいと思います。
■人とのつながりは大切
日ごろから学会や研修会に地域を問わず、積極的に参加して情報収集をしています。また、現地参加することで人とのつながりをつくることも大きな目的です。院外の医療情報技師とネットワークを築くことで、分からないことや困りごとを気軽に相談できるので、日常の業務を行う上で大きな支えであり、私にとっては欠かせない重要なネットワークです。
医療情報技師の役割は、日ごろから医師や現場スタッフから情報を収集し、業務が円滑に進むように院内調整を行うこと、また現場とベンダー双方の思いや認識を伝える橋渡し役だと思っています。これからも病院DXを支える縁の下の力持ちとして貢献していきたいと思います。
松本清美氏
特定医療法人桃仁会病院 データサイエンス部 医療情報課 課長
医療情報技師/医用画像情報専門技師
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