建築物のエネルギーを実質“自給自足”とする「ZEB」(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)への関心が医療界で高まっている。11月29、30の両日に東京都内で開かれた日本医療福祉設備学会では国内外のZEBの取り組み事例を報告。会場では、ZEBを導入した病院事例をパネルで紹介するコーナーが設けられるなど、参加者は病院でのZEBの可能性を探った。【石川紗友里、川畑悟史】
地球温暖化への対応として、政府は現在、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」に取り組んでいる。建築物でのCO2削減は大きなテーマとなっており、ZEBは、そのテーマの中のひとつ。建物の断熱性能や空調などのエネルギー効率を高め「省エネ」を進め、太陽光発電などでエネルギーをつくる「創エネ」を一緒に行いながら、エネルギーの自給自足を目指すというもの。
29日の講演では「医療施設とZEB―国際動向、香港と日本」をテーマに、香港の病院管理局と北海道の帯広厚生病院の事例を関係者が発表した。
香港で公立病院などを管理する病院管理局の事例としてユエン・パクルング氏(香港技術者登録局局長、香港技術者協会 元会長)は、「香港の公立病院における2050年までの脱炭素実現にむけた技術革新のロードマップ」をテーマに講演した。
病院管理局で管理するのは43の公立病院と120以上の診療所。24時間年中無休で医療サービスを提供する公立病院が使う電力使用量全体の電力使用量の約3%を占めるといい、エネルギー削減が大きな課題となっている。
同氏によると、課題解消に向け、病院全体のうち消費エネルギーの割合の高い、チラーシステムや冷却塔、照明のエネルギー削減を重点的に実施。具体的には、
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