全国⾃治体病院協議会の北村立常務理事(石川県立こころの病院院長)は、5月20日に厚生労働省で開催された今後の精神保健医療福祉に関する検討会の中で、精神科急性期医師配置加算の算定要件とされている⾮定型抗精神病薬クロザピン(商品名クロザリル)の使⽤実績を「要件から外すべき」だと強く訴えた。その理由について、北村氏は、特に地方では人口減少により使用実績を満たせない医療機関で、実績を作るために、本来ならば使用しないで済む患者への不適切使用の危惧を指摘する。「極めて大きな問題をはらんでいる」というクロザピンの施設基準について、北村氏に聞いた。【聞き手/渕本稔】
国は、難治性の統合失調症患者に有効とされるクロザピンの使用を普及させるため、2020年から精神科急性期医師配置加算の算定要件にクロザピンの新規導入件数を組み入れた。
当院でもクロザピンによる治療を行っており、治療成績は良好と言える。これまで35人の入院患者に使用し、23人が継続使用している。そのうち、長期入院していた患者も含めて5人が外来に復帰した。また、退院はできなくとも使用薬剤が整理され、病状がかなり改善した患者も複数見受けられる。
一方で、クロザピンは命に関わる重篤な副作用を生じうるため、使用する患者を慎重に見極める必要がある。特に高齢者への使用にはかなりのリスクが伴うので、禁忌ではないものの、当院では60歳以上の患者には1人しか使用していない。
クロザピンの使用に当たっては、薬の有効性とともに危険性を患者に説明し、患者からの同意を得る必要があり、治療開始後には定期的な血液モニタリングなどを実施しなければならない。
クロザピンの治療効果は高いものの、対象となる患者は限定される。09年に「クロザリル」の販売を開始してから15年が経過し、クロザピンによる治療が全国的に進められてきたことで、対象となる難治性の統合失調症患者が減っていくのは当然のことである。当院がある石川県かほく市近辺では、
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