全国の病院広報事例を集めて共有し、特に優れた広報活動を行う病院を表彰する「病院広報アワード」(主催CBnews)の伴走企画「『病院広報アワード』受賞への道」。2回目は、多くの病院で広報活動の取り組みを支援する、NPO法人メディカルコンソーシアムネットワークグループ理事長の山田隆司氏が語る「これからの広報を考える」です。情報を効果的に伝えるための“戦略”とは-。
【NPO法人メディカルコンソーシアムネットワークグループ理事長 山田隆司】
■病院広報の土台づくりを
広報と広告の違いについてよく、広報は「Love Me(私を愛して)コミュニケーション」、広告は「Buy Me(私を買って)コミュニケーション」と表されます。病院広報の究極の目的は「好かれること(自院のファンになってもらうこと)」に尽きると思います。「その患者」は数ある医療機関の中から、記憶に残る「受診してもいいな」と思う病院を選ぶからです。好かれるためにはまずは「伝えること」が必要です。情報を発信して多くの人に自院を知っていただく行動が広報活動の第1歩となります。
次に、ただやみくもに発信するだけでなく、何をどのように伝えれば「好かれる」のか、戦略を考えます。最も重要なことはコミュニケーションを継続させること。皆さんの恋愛プロセスと同じですね。「継続的に伝える」→「信頼を得られる」→「好かれる(選ばれる)」ために広報は欠かせません。
ウイズコロナ時代を迎えた今、「広報は継続的な経営戦略である」と捉える医療機関が増えていると感じています。皆さんの病院でも広報の意義、目的、目標、戦略、計画、ステークホルダーの設定といった広報活動の「土台」を見直されてみてはいかがでしょうか。
■行動する上で大切となる広報の定義
広報とは英語の「Public Relations」を日本語訳した言葉です。Public「公衆・公共・一般社会」とRelations「関係性」を作る、すなわち自院と社会との相互コミュニケーションを図り、良い関係を築くということです。
世の中には広報の定義がいくつもあります。ここで引用するのは米国の大学や大学院で教科書として使用され、広報のバイブルともいわれている『Effective Public Relations』(※邦訳・体系パブリック・リレーションズ)に書かれているものです。
「パブリック・リレーションズとは、組織体とその存在を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、持続可能とするマネジメント機能である」。日本では「公益財団法人日本パブリック・リレーションズ協会」、「電通PRコンサルティング」も定義をそれぞれのホームページに掲載してあります。一度、参考までにご覧になってみてください。
自院の広報の定義はいかがでしょうか。定義が変われば行動が変わります。行動が変われば結果が変わります。
■さまざまある広報ツール
タイトルを「これからの広報を考える」と掲げましたが、広報の基本的な役割は社会や時代が変化しようとも同じです。自院とメディア、企業、行政、団体、職員を含む一般社会との間に、さまざまなコミュニケーション活動を通じ、良好な関係を構築することです。コミュニケーションはさまざまな広報ツールを駆使して行います。
私のように定期的に受診をしている者としては、ホームページは欠かせませんし、ぜひスマホ対応でお願いしたいです。LINE登録していると、かかりつけ病院からいろいろな情報が届きますから便利です。
診察までの不安な気持ちの中で手にする広報誌もありがたい存在です。コロナの感染予防対策として、広報誌を院内から撤去したという医療機関もありましたが、徐々に置かれるようになってきました。コロナ禍ではSNSや動画配信、自院独自のYouTubeチャンネルを立ち上げた医療機関もあり、広報ツールは時代や社会背景とともに変化しています。
そんな中でも、私は「広報誌」が「伝えること」「好かれること」に役立つ広報ツールの代表だと思っています。次回はその点をご紹介したいと思います。
山田隆司(やまだ・たかし)
東京医学専門学校臨床検査科卒業。国家公務員共済組合連合会虎の門病院臨床検査部、診断薬会社、実験動物研究所センターを経て、1990年より医療法人鉄蕉会亀田総合病院入職。幕張新都心に新設した亀田総合病院附属幕張クリニック準備室室長・事務長・千葉事業部管理部長を務める。2006年より医療法人敬和会大分岡病院(現在・社会医療法人)広報マーケティング部部長、11年より同部顧問。13年より多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長を務める。現在、NPO法人メディカルコンソーシアムネットワークグループ理事長、全国病院広報実務者会議代表、病院広報誌編集会議代表、多摩大学医療・介護ソリューション研究所フェロー、DPCマネジメント研究会理事、日本医療実践協会東海支部参与、医療法人広報顧問などを務める。
▼▼ エントリー⽅法等の詳細は、こちらから ▼▼
(残り0字 / 全2083字)
次回配信は5月中旬を予定しています
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】
【関連キーワード】