医師の時間外労働の上限が2024年4月以降、休日労働を含めて原則として年960時間に罰則付きで規制される。医療機関が罰則を科されないためには、勤務医の労働時間を適正に把握した上で時間外労働を上限内に収める必要があるが、厚生労働省医政局医事課の平野貴之・医師等医療従事者の働き方改革推進室室長補佐は、「単に上限規制を守ることだけが医師の働き方改革ではない」と強調する。【松村秀士】
厚労省が実施した準備状況調査やこれまで同省に寄せられた意見では、医師の労働時間の短縮を進める上で、▽勤務医の適正な勤怠管理▽宿日直許可の取得▽研さんと労働の線引き▽医師派遣の引き揚げ-という4つの課題に関する意見や要望などが多かったという。
このうち、平野さんが特に重要なポイントとして位置付けるのが、宿日直許可の取得だ。
宿日直許可を受けた医療機関は、労働時間の規制の適用が許可の範囲内で除外される。許可を受けた宿日直(9時間以上連続)は、休息時間として取り扱うことができる。医師の派遣元の大学病院などは、特例水準の適用先に義務付けられる「勤務間インターバル(9時間以上)の確保」に対応しやすくなる。そのため派遣先にとっては、医師の引き揚げリスクを減らせる可能性がある。
それだけに平野さんは、「まずは労働基準監督署(労基署)に申請してほしい」と呼び掛ける。
特に救急や産科の病院では、宿日直許可を取得する必要性への認識の低さが指摘されてきた。そこで、許可申請に関する相談窓口を厚労省が4月に開設すると、それ以降は許可申請の件数が増加傾向に転じたという。
これまで医療機関から寄せられた声として、「許可を申請しても取得できない」「許可を得るための条件である医師1人当たりの宿直は週1回、日直は月1回を守るのが難しい」「自院の今の状況で取れるのか」との意見や質問が多い。半ば諦めているかのような内容もある。
ただ、救急や産科の医療機関でも許可を実際に取得し始めている。例えば医師1人当たりの宿直が週2回や日直が月2回といった勤務形態で認められたケースもある。
宿日直許可に関する相談には、基本的に申請先の労基署が対応することになるが、平野さんは、「いきなり労基署へ相談するのはハードルが高いなら、都道府県の医療勤務環境改善支援センターに気軽に相談してほしい」と話している。厚労省の相談窓口を活用するという方法もある。
■医師の引き揚げリスクの軽減策
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