2022年度診療報酬改定が4月から実施された。今回の改定の特徴は? 介護報酬との24年度同時改定に向けた動きは? 日々、中央社会保険医療協議会をカバーするCBnews編集部記者が現場で見聞きした裏話を交え語る。【CBnews編集部】
【プロフィール】
A記者 今回の診療報酬改定取材の主担当
B記者 診療報酬取材歴10年以上の記者
C記者 精神科医療を中心に診療報酬改定を担当
■一言で言うと「役割分担」
―22年度診療報酬改定を振り返ってどう感じたか。
B記者 一言で言うと「役割分担」がより明確にされた改定だった。
多くの医療関係者が共通して言うのが、「医療の役割分担を促す国のメッセージが明確だった」ということ。外来もそうだし、入院もそう。人口減少が進み、医療スタッフの確保が難しくなるのに在宅を中心に当面、医療の需要が増える。そのため医療の役割分担を進めて効率化するしかない。
A記者 地域包括ケア(地ケア)病棟入院料・入院医療管理料を算定する病院には相当厳しい改定だったと思う。その中でも、特に中小の病院は今後、減算規定のダメージが出てくる気がする。
C記者 精神科医療に限って言えば、選択と集中に厚生労働省が力を注いでいる姿勢が今回の改定で読み取れた。例えば、急性期充実体制加算を算定できる精神科を持つ病院や精神科病院、これにさらに加算の加算に当たるような精神科充実体制加算が新設された。
特に急性期における精神科病院の集約を図る方向性を明確に打ち出している。
あと加速しているのが、前回改定で焦点となったクロザピンという統合失調症の薬。退院・地域移行を促進するためにクロザピンに関する改定が盛り込まれた。
―役割分担がキーワードとして出たが。
B記者 それを象徴する一つが感染防止対策への評価の見直しだ。これまで2段階だった感染防止対策加算の評価を、感染対策向上加算1から加算3の3段階に再編した。点数が高い感染対策向上加算1(入院初日710点)は新型コロナの重点医療機関向けで、これを算定するには、加算2や加算3を算定する医療機関に感染対策をアドバイスし、合同で年4回程度、定期的に研修会を開かなくてはならない。
感染対策向上加算2(同175点)は新型コロナの協力医療機関向け、加算3(入院初日のほか、入院期間が90日を超えるごとに75点)は発熱外来の医療機関向けで、それらを算定する医療機関は、加算1の病院が開く研修会に参加しなくてはならない。感染対策向上加算1を算定する医療機関は、医師、看護師、薬剤師らを専任配置して加算2や加算3の医療機関に院内感染対策を助言できる体制を整備することも求められた。地域全体で役割分担しながら感染対策を底上げするイメージだ。
地域包括ケア病棟入院料と地域包括ケア入院医療管理料の見直しも役割分担の一環といえるかもしれない。これらの診療報酬を算定する病棟や病室の本来の役割は、▽急性期の治療を終えた患者の受け入れ▽在宅療養患者の急変時の受け入れ▽在宅復帰支援-の3つ。
それらをきちんとカバーしていない病院があるので、縛りをきつくした。地域包括ケア病棟(病室)では、急性期病院を退院した患者を受け入れてリハビリテーションを提供し、在宅復帰を支援する。在宅復帰した患者さんは開業医がカバーするという感じ。
B記者 もう一つ、厚労省は今回、急性期医療を担う医療機関の役割のイメージを初めて示した。それは、▽重症救急患者に対する医療の提供▽総合的・専門的な医療の提供▽自宅や後方病床などへの退院支援の機能-の3つ。
今回の改定では、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の評価票が見直され、「モニタリング・処置等」の状況を評価するA項目から「心電図モニター」が削除された。肺炎の受け入れが多いような急性期病院にとって厳しい見直しだったと言われているが、これからは、3つの役割をしっかりカバーしないと、地域包括ケア病棟入院料と同じように引き締めが強まるかもしれない。いわゆる「なんちゃって急性期」病院では、少なからず影響が出るだろう。
C記者 確かに救急・手術とか高度かつ専門的な医療・急性期の患者ってことで急性期充実体制加算にも明記されているので、役割分担という流れが確実に反映されている。
A記者 外来の役割分担で言うと、今年度から始まった外来機能報告制度が大きなポイント。これは、医療資源を重点的に活用する外来の実施状況や紹介・逆紹介率、外来の人材配置状況などを報告させる制度。
その報告を基に地域の協議の場で「紹介受診重点医療機関」を明確化する仕組みで、22年度改定では、その医療機関が入院医療を提供した場合の診療報酬を作った。
要するに、紹介受診重点医療機関を診療報酬で評価することで、国は外来医療機能の明確化・連携を後押ししたい考えだ。
恐らく新設された「紹介受診重点医療機関入院診療加算」は、次期改定でさらに評価されるだろう。それによって、外来医療の役割分担を推し進める狙いだろう。
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