【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
1.22年度改定の変更点
2022年度診療報酬改定において、「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)は評価項目および基準値の変更が行われた。連載第162回で取り上げた「見直し案3」が採用され、A項目の心電図モニターの管理が削除されたことは、病院によっては激震が走ることになるだろう。ただし、基準値についてはコロナ禍という配慮もあったのだろうか、急性期一般入院料1について看護必要度IIの場合、現行の29%が28%とされ、さらに200床未満については25%と緩和された。200床未満が甚大な影響を被ると当初から予想されたため、緩和措置により救われて対応可能となった病院もあるだろう。
看護必要度については、改定ごとにマイナーチェンジされるが不変の真理があると本連載でも繰り返し述べてきた。それは、救急、特に救急車対応に注力すると同時に、全身麻酔のような侵襲性の高い手術を行い、その患者を早く帰すということだ。現行評価では救急車がA項目で、手術がC項目で評価されており、どちらかというと手術の評価が手厚いのは事実である。
連載第143回のように、サンプル病院を入れ替えてもこの傾向が変わることはない。グラフ1は、横軸に入院からの経過日数を取っており、縦軸は経過日別の一般病棟の看護必要度IIで評価した結果である。手術あり患者の評価は極めて高いのに対して、手術なしは厳しい。手術なし患者の最初の5日間が40%以上と高いのは、救急医療管理加算が5日まで評価されていることと整合する。
なお、手術ありと手術なしの全体で見ると、入院12日目に30%程度のラインにたどり着き、全国のDPC参加病院の平均在院日数と近しい値になる。だとすると、診断群分類別の平均在院日数であるDPC/PDPSにおける入院期間IIを意識した病床コントロールを行えばいいわけであって、70%が達成できるかが一つの目安になるだろう。ただ、これらは相対評価である点には留意が必要で、絶対的な基準とはいえない。
結局、手術患者をいかに獲得するか、あるいは救急に注力してもその患者をいかに短期で回転させるかが問われている。ただし、救急のハイボリューム病院は、漏れなく高齢患者を受け入れることになるため、心電図モニターの管理が削除された影響は大きい。グラフ1の手術なし患者の看護必要度における評価は、22年度改定の影響でさらに下落することだろう。
2.改定の影響
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次回配信は3月14日5:00を予定しています
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