新型コロナウイルス感染拡大が、病院経営に影響を与えている。特に小児科の落ち込みは大きく、日本医師会によると、2020年8月の小児科の⼊院外総件数は対前年同月比28.2%減を記録。小児(6歳未満)を診療する医療機関への支援策を国が12月に示すなど、目まぐるしく状況が変化している。
有明こどもクリニックは法人へ舵を切り、小児に限らず出張抗体検査をきっかけに経営を回復させた。小児以外の患者の取り込みに成功した同クリニックの小暮裕之理事長に話を聞いた。【井上千子】
■コロナ禍で小児向け往診を始めるも、低いニーズ (残り1422字 / 全2430字)
小児科医の小暮裕之氏が理事長を務める、医療法人モンゲンロートは、2016年の有明こどもクリニック(豊洲院)を皮切りに、東京・湾岸エリアを中心に5つのクリニックを展開する。20年8月には皮膚科の新規開院と、既存医院の移転を行っており、例年以上に支出がかさむ時期に新型コロナウイルス感染拡大が直撃した。
2月の小中高、特別支援学校の一斉休校に続き、4月に緊急事態宣言が発令されると、幼稚園・保育園も休園や登園自粛が相次いだ。
その結果、3月以降の患者数は当初見込みの6割減、売り上げも5割減まで落ち込んだ。苦肉の策として医師の基本給の一時引き下げなど固定費削減に取り組むも、「当時は現預金も仕事もない大変な状況だった」と振り返る。
「クリニックで待っていても患者は来ない」と小児向けに往診をスタート。ところが湾岸エリアでは思いのほか往診ニーズが低かった。「子ども向けではクリニックで患者を待っていても、往診に出掛けても状況は変わらない」と小暮理事長は痛感。
幸か不幸か外来患者の減少で医師や看護師は時間を持て余していた。
新型コロナウイルスの収束を座して待つよりは、時間と戦力を十分につぎ込める今だからこそ、従来と異なる新しいチャレンジができる-。そう考え、かねてより懸案となっていた「大人の患者の呼び込み」に乗り出した。
■BtoCからBtoBへ、法人向けに方向転換
緊急事態宣言中は「PCR検査が受けられない」というニュースが連日のように報じられていたこともあり、4月には新型コロナウイルス抗体検査の準備を開始。翌5月に緊急事態宣言が解除されたタイミングで「法人向けニーズも高まる」と踏んで、法人向け抗体検査に着手することにした。クリニックで外来患者を待つBtoCスタイルから、法人向けに出張に出掛けるBtoBへ方向転換した。
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