2018年にケアプラン作成を支援するAIを商品化して注目を浴びたシーディーアイ(東京都中央区)。利用者の状態に合わせて自立支援を志向した居宅サービスを提案すると同時に、利用者の将来の容態像を示すことが製品の特徴だ。20年5月には、製品のリニューアルを行っている。19年4月に同社の社長に就任し、在宅系介護サービスの大手事業者であるセントケア・ホールディング(同)でも取締役としてグループのICT戦略を担っている濱岡邦雅氏に話を聞いた。【聞き手・吉木ちひろ】
-19年4月に岡本茂雄前社長に代わり、代表取締役社長にご就任されました。ご経歴や介護業界とのかかわりや、その中で感じた問題意識について聞かせてください。
「30年近くIT業界で仕事をしてきて、セントケア・ホールディングには17年4月に入社しました。セントケアではグループ全体の新規事業の企画・立ち上げ及びICT戦略を担っています。
シーディーアイにおいても、居宅介護支援に限らず介護業界全般について、AIをどのように応用して仕事の質や方法を進化させられるかといった視点に立って事業に取り組んでいます」
「ICTの活用という面では、ほかの産業と比べて介護業界がかなり遅れていることは事実です。介護の現場では、拠点に数台置かれているパソコンと紙でほとんどの業務を行い、誰もスマートフォンを使っていないというような状況を知った時は、これまで身を置いてきたIT業界に当てはめると15-20年ほど前にさかのぼったような感覚になりました。その分、『変わったらすごく変わる、伸び代がものすごく大きい』という期待を持っていたし、現実にコロナ禍を機に介護業界が大きく変わりつつあることを実感しています」
-骨太方針2020には、「ケアプランへのAI活用を推進する」との記載がありました。これを受けて行政などに期待することや、周囲の変化はありますか。
「これまでに自治体と実証実験などを行ってきましたが、先進的な取り組みを積極的に行う自治体との連携が中心で、大多数はAIを使うことに積極的ではなく、保守的な姿勢である印象を受けていました。しかし、今回の記載を受けて、『具体的に話を聞かせてほしい』といった問い合わせが増えました。これまで先進的とみなされていなかったであろう自治体においても、『うちも取り組まなければならないのかな』と感じ始めているように思います」
「また、これまで1人のケアマネジャーが居宅介護支援の質を保つことができていると考えられてきた上限が39人です(編注:居宅介護支援事業所の特定事業所加算算定要件の『利用者数が介護支援専門員1人当たり40名未満』より)。これがAIの利用推進によって45名、50名でもケアマネジメントの質が保てると認められるようになり、居宅介護支援事業所の経営改善に寄与できるようになることを期待しています」
■自立志向型ケアプランだけでなく、「集合知」を可視化する視点を実装
-18年10月に「自立支援を目指すケアデザイン人工知能」として、「MAIA」をリリースされていました。これを、20年5月に「SOIN」(ソワン)にリニューアルしたということですが、変更点はどのあたりでしょうか。
「当社がユーザーに提供する『未来を可視化し、共有する』、さらに、介護サービス利用者本人に『選択を促す』という根本的な価値は変わっていません。
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