【横浜市立大附属病院集中治療部 部長 准教授 高木俊介】
新型コロナウイルス感染患者を初めて目にした我々は、どのような症状経過をたどるか、どのような画像を示すか未知であった。そのような状況下、リアルタイムでの患者情報の共有方法が確立されていない本邦においては、電話による情報収集しか手段を持ち得ていない。神奈川で感染患者を受け入れている病院の先生に電話で連絡をして、患者のベッド状況や治療状況、CT画像、人工呼吸の経過、気道管理時の感染対策などについて聞き取り調査を行った。
今までに見たことのない感染症への対応に、各施設でパニックに陥っているのを感じた。電話での情報共有の困難と、横断的に情報統括をする組織を即座に構築する難しさを感じた私は、クラウド上で各施設の受け入れベッドの状況や、感染患者の治療方針などをリアルタイムに共有することが、混乱した医療現場には必要と考え、「横断的ICU情報探索システム」(CRoss Icu Searchable Information System: CRISIS)の構築を提案した。
その後は、京都府立医科大学の橋本悟先生、ECMOプロジェクト代表の竹田晋浩先生らが中心となり、日本全国の集中治療施設における感染患者の受け入れ状況や患者管理の情報を収集するシステムを構築した。
日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本呼吸療法医学会の3学会合同による「日本COVID-19対策ECMOnet」が主体となり、複数学会にまたがる革新的なデータベースが構築された。
2月中旬にリリースされてから、5月19日時点で586施設へと参加が増えた。総ICUベッド数は6,000近くに上り、日本全体のICUベッドの約80%をカバーした。今までにない悉皆性を担保した横断的なデータベースと考えられる。
図1
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