【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
介護サービスの利用者が、たとえ一人暮らしでも最後まで住み慣れた家で過ごしたい、介護業界の慢性的な人手不足の中、夜間の業務の省力化を図りたい―。このような難題もICTやAI、ロボット技術を生かしたり、遠隔での24時間365日の見守りや、地域の医療・介護従事者の連携により、解決できるかもしれない。
■非接触の生体センサーで呼吸と脈の状態を常時把握
福岡市を拠点に事業展開している株式会社ワーコンは、コールセンターで働くナース(ウオッチ・コンシェルジュ)が、遠隔から在宅高齢者等の生体情報などを24時間確認し、利用者と家族、地域の医療機関等をつないでいる。
ワーコンのシステムは、非接触型の生体センサー(つまり、体に装着しない)とAI搭載のコミュニケーションロボットを通じて情報を集め、遠隔で患者・家族や医療、介護などの関係者に提供するものだ。
一人暮らしの高齢者の安否確認だけではなく、状態に応じた不定期の訪問診療や訪問看護等にもつなげられる。
このシステムは、要介護高齢者だけではなく、自宅で元気に暮らす人にも利用されている。遠く離れて住む家族が、一人暮らしの親の日常の状態や体調の急変がないかを確認するために導入するケースがある。
写真1の左は、ドップラーセンサーと呼ばれる「動き」に反応する非接触型生体センサーだ。体表の動きに含まれる胸部の動き(呼吸)と体表を流れる静脈流の動きから脈を選別する。
オリジナルソフトを通じて解析した利用者の状態は、右のスマホアプリ画面などで確認できる。
写真1 非接触型生体センサー(左)とスマホアプリ(右)
(写真提供:株式会社ワーコン、以下同様)
スマホアプリでは、呼吸、脈などのセンサー情報を基に「活力指数」を表示する。ベッドだけでなく、リビング、トイレなどにも生体センサーを設置すると、利用者がどの場所で過ごしているかを把握でき、急変なども分かる。
写真2では、ベッド下部に非接触型の生体センサーを付けている。カメラを使った仕組みではないため、プライバシーも守られながら、健康状態や安否を確認できる。また、センサーが発する電波は身体に影響のない微弱電波で、医療器具にも影響を及ぼすことはない。
写真2 非接触型のセンサーをベッドに装着している部屋の様子
■ロボットに「助けて」と呼び掛ければ、センターにつながる
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