介護・認知症領域については、現場のニーズを把握しつつ、介護従事者の負担軽減や質の高い介護サービスの提供に資するようなAIの導入を進める―。厚生労働省がこのほど公表した「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム議論の整理と今後の方向性」(以下、議論の整理)では、こうした方針が明記された。AIの導入と共に、必要な制度面や運用面の対応についても検討する必要性を挙げている。【新井哉】
■「現場のニーズに即したAI活用が必要」
介護領域などのAI活用を巡っては、厚労省が6月27日に公表した労働政策審議会労働政策基本部会の報告書で、質の高い労働の実現のためにAIを活用する方向性を示しており、「高齢者、障害者、育児・介護を行う労働者等、働くことに制約のある多様な人材に活躍の場をもたらす効果も期待できる」と記載。2020年代後半以降、AIの活用やロボットによる自動化で生産職などが過剰になるとの推計や、介護職員の人手不足などの課題があることを説明。AIなどの活用を通じ省力化を進め、人手不足に対応することや、労働時間の短縮や危険を伴う業務の安全性の向上により、「快適な職場環境」を実現する必要性を挙げていた。
今回公表された議論の整理では、コンソーシアムで議論した同様の課題に対する方向性などが盛り込まれている。特にAI開発を進める「重点6領域」の1つに挙がっている介護・認知症領域については、AIに関する要望が強い一方、「現場のニーズに即したAI活用が必要である」「現場への導入を進めるためには、いかにコストダウンして普及されるかも重要」といった意見が出たことを明記。今後の方向性について、「研究者も開発者も、海外での事例を参考にしつつも、日本としての保健医療分野におけるAIの活用方法を、研究や医療・介護現場等、あらゆる場面で作っていく必要がある」としている。
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