麻酔科医の育成が追い付かない―。将来の医療人材確保のために、大学病院がすべきことを模索し、麻酔科医を支える周麻酔期看護師の養成に着手した横浜市立大学の後藤隆久教授。大学院修士課程「周麻酔期看護学」を設置した2016年は、「働き方改革実現推進室」が発足した年でもある。持続可能な医療のために、大学病院が担う役割を聞いた。【齋藤栄子】
「神奈川は人口約910万人に対し医科大学は4校、東京は人口約930万人で医科大学は13校。とてもじゃないが、麻酔科医の育成が間に合わない」と、後藤教授は言う。全国的に人口は減少傾向にあるが、首都圏はまだ増加傾向で、今後の高齢者の増加からも医療需要は旺盛だ。
■ダウン・スパイラルに陥る前に先手を
後藤教授が横浜市立大学に着任したのは06年。横浜市立大学麻酔科は全国トップレベルの医局員数と毎年の新入局員数を誇るが、それでも手術件数の増加に追い付かず、県内を中心とする関連の病院へ医局から十分な数の麻酔科医を出せていないという。医局として働き方改革を進めてもいるが、麻酔科医は女性医師が多いこともあり、マンパワーを増やすのは容易ではない。さらに、労務環境が少しでも悪くなると加速度的に人がいなくなる経験を以前にしているので、ダウン・スパイラルに陥らないように先手を打つべきだとの思いから、集中治療部に「Tele-ICU」への取り組みを促した。
さらに、全国では2校目となる大学院修士課程「周麻酔期看護学」を16年に設置した。周麻酔期看護学とは、麻酔・手術による全身の生体反応に対し、科学的・包括的な対応を迅速にできるアドバンストな看護師を育成するもの。横浜市立大学では、麻酔科・看護部手術室・大学院看護学専攻がコラボレーションし、実践型・思考型の教育課程プログラムを構成している。18年3月に1期生が2人、19年3月には2期生1人が卒業した。
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