【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
前回で保険薬局の損益差額率を示し、特に多店舗展開のチェーン薬局において高収益であるという実態を示した。大病院前や敷地内薬局等の収益性は極めて高く、病院利益が外部に流出した可能性もある。しかし、前回のデータは2016年度のものであり、18年度調剤報酬および薬価改定後の状況を見ると、一変していることは伝えておく必要がある。
調剤事業を行う上場企業24社の18年度上半期の業績は、総じて営業減益となっている(調剤薬局部門の業績を非開示とする企業もある)※。前回取り上げた日本調剤も、調剤薬局部門の売上高が1010億5400万円(前年度同期比1.0%増)、営業利益が31億9700万円(同43.1%減)の大幅減益だった。このことは、わが国の医療において、改定がもたらす影響が甚大であり、国のなたの振り方によって、あらゆることが変わってしまうことを意味する。もちろん、これは医療経済実態調査に基づいた改定が行われ、医療費の配分方法の見直し、あるいはどの主体に利益を付けるかといった政策判断の結果でもある。それだけ、医療政策や診療報酬等の方向性は無視し得ないということだ。
保険薬局の営業利益は減少したものの、前回指摘したように、損益差額率を見れば、病院と比べて高収益なことに変わりはない。ただこのことに対し、上場企業が営むことができるのが保険薬局であるから、市場原理に委ねる方が収益性が高く、病院は株式会社による経営が許されていないから経営効率が悪い、といった見方もあるかもしれない。
今回は、医療、特に病院経営を市場原理に委ね、企業に開放するのがよいのか、あるいはそうではないのかについて考え方を整理し、今後の方向性に言及したい。
※PHARMACY NEWSBREAK(2019年1月18日)
(残り2600字 / 全3383字)
次回配信は2月18日5:00の予定です
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】