【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2018年度診療報酬改定で、従来の7対1入院基本料および10対1入院基本料が再編・統合され、10対1の看護配置を基準とし、急性期患者の該当割合によって7つに区分された=図=。
図 新たな入院医療の評価体系と主な機能 クリックで拡大
厚生労働省「平成30年度診療報酬改定説明会」資料より
「急性期一般入院料1」のみが7対1の看護配置を求められ、そのほかは10対1を基本とすることになった。今まで7対1と10対1では入院料の差が大き過ぎて、10対1に転落するという選択は、多くの病院にとって「あり得ないもの」とされていたが、階段を下りやすくし、病院に「現実的に必要な看護職員の数を見極めるように」という判断が迫られた。これは地域医療構想との整合性を保たせるものでもあり、各地域で過剰とされる急性期病床を絞り込むための方策の一つと考えられる。ただし、18年度改定では、「B14」あるいは「B15」※に該当する認知症、せん妄の患者については、B項目が3点以上であれば、A項目が1点以上で重症と定義され、高齢者が多くを占める病院は大幅に「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)が上昇した。
※「B14」診療・療養上の指示が通じる、「B15」危険行動
B項目は慢性期病院ほど高い傾向があり、結果として診療密度が低い“急性期らしくない病院”ほど、看護必要度が上昇することになった。これによって、看護必要度の基準が厳しいという病院はほとんどなく、むしろ緩やかになったという印象すらある。18年度改定前には基準を満たすのは厳しいとうわさされていたものの、結果として、いわゆる「7対1看護配置」の病院は減少することはなかった。ただし、現在の看護必要度は、慢性期病院でも一定の値になることから、現状の評価を引き続き急性期患者の割合を見るための基準とするのには難しい面があり、次回の20年度改定以降は厳格化が行われる可能性も高く、決して楽観視すべきではない。
今回は、急性期と言い得るための基準として、患者1人1日当たりの入院収入である入院診療単価に着目し、急性期機能の実態に迫っていく。
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次回配信は12月10日5:00の予定です
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