85歳以上の在宅復帰率は約9割ー。織田病院(佐賀県鹿島市、111床)ではなぜこのような対応ができるのか。病棟の多職種フラットチームや退院後2週間の手厚い在宅フォロー、ITの活用など、時間をかけて試行錯誤してきた結果が今日に結び付いたものだが、それは今後求められる医療・介護を映し出している。【大戸豊】
■85歳以上の入院患者が10年で2.7倍に
佐賀県南部にある鹿島市には公的病院がなく、二次救急を担う病院が不足していた。社会医療法人祐愛会の織田正道理事長は、30年前に大学から戻り、織田病院を救急病院に変えようと奮闘してきた。外来患者を周辺の医療機関に逆紹介し、救急医療に資源を集中しつつ、地域にも「24時間365日救急患者を断らない」と宣言してきた。同院は開放型病床で、現在60人の登録医がいる。患者の紹介は月に300人以上だ。
織田理事長は「85歳以上の高齢者にどう対応するか真剣に検討すべき」と訴える。85歳は認知症や運動器障害などを抱え、要介護になる人が5割を超える年齢だ。この年齢層の増加ペースは著しい。同院の85歳以上の新規入院患者数(月間平均)は2006年に300人だったが、16年には816人と10年で2.7倍に増えた=グラフ=。
織田理事長は「地方でさえこれだけ増えた。関東圏などの今後を考えると空恐ろしい」と語る。
グラフ 織田病院の85歳以上の新規入院患者数(右)
■家に安心して帰すための多職種病棟チーム
同院は現在、平均在院日数12.9日、病床利用率96.1%とフル回転の状況だ。救急を受けるのであれば当然、病床を空けておく必要があり、これまでも退院には頭を悩ませてきた。
以前は療養病院に転院させることも多かったが、近年は在宅に帰る患者が増えている。安心して生活の場に帰さなければ、病院でいくら懸命に治療しても、医療の質は向上しない。
織田理事長は「退院すれば病院で行った治療やケアが途切れてしまう。ケアを継続するために、退院直後もフォローする仕組みが必要だった」と語る。
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