来年度予算案の編成作業が年末にかけて本格化する。最大の焦点は、今回も社会保障関係費の伸びの抑制。来年度には診療報酬と介護報酬の同時改定が控えるだけに、年末の予算折衝はいつにも増してヒートアップしそうだ。財務省側はどのようなスタンスで臨むのか? 財務省主計局の阿久澤孝主計官(厚生労働第一担当)に聞いた。【兼松昭夫】
――来年度には診療報酬と介護報酬の同時改定が予定されているが、国の財政悪化を懸念する声が医療関係者の間にも出始めている。
今年度の一般会計の予算では、歳出の総額は97.5兆円。税収などでカバーできているのはこのうち57.7兆円(59.2%)で、34.4兆円(35.3%)は公債金で賄っている。借金返済や利払いのための支出を除き、社会保障や公共事業などの政策に必要な支出をその年度の税収等だけでカバーできているかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)は10.8兆円の赤字だった。つまり、何も対策をしなければ借金が毎年積み上がっていくということだ。これまでの累積での公債残高は865兆円、対GDP(国内総生産)比は156%と諸外国に比べ極めて厳しい。
赤字国債の発行がなかった1990年度と比べると、税収は同年度が58.0兆円、今年度が57.7兆円でほとんど変わらない。これに対して歳出は、公共事業、防衛、文教・科学技術などの歳出はほとんど変わらない中で、社会保障関係費は90年度が11.6兆円、今年度が32.5兆円で20.9兆円増えた。収入が変わらないのに社会保障の支出が増えているので、その分で赤字国債の発行を余儀なくされている。これからは歳出をいかに減らし、歳入をいかに増やすかを考えなくてはならない。
政府が2015年に取りまとめた「経済・財政再生計画」では、経済成長を促すことで歳入を増やし、同時に歳出改革、歳入改革を進めて財政健全化を目指す道筋を打ち出した。国と地方のプライマリーバランスを20年度までに黒字化する財政健全化目標を達成するためだが、内閣府が今年7月に発表した中長期試算では、経済の再生がたとえ順調に進んでも20年度には8.2兆円のPB赤字が見込まれる。ただし、この試算には今後の予算編成過程における歳出削減が反映されていない。すなわち、今後の歳出削減努力を通じ達成を目指すことになる。
歳出の中でボリュームがいちばん大きいのが社会保障関係費で、今年度は一般会計歳出全体の33.3%に当たる32.5兆円だった。ただでさえボリュームが大きい上に、高齢化や高度化による伸びが見込まれるため、社会保障関係費の伸びの抑制は必須だ。歳出改革の一環として「経済・財政再生計画」では、16年度から18年度までの3年間に社会保障関係費の伸びを1.5兆円程度に抑えることを「目安」にしており、16年度と17年度予算ではこれをクリアできた。来年度予算案の編成でもここが焦点になる。
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