聖路加国際病院(東京都中央区)が土曜の外来診療を縮小―。5月の病院側の発表は、医療関係者に衝撃を与えた。労働基準監督署の是正勧告を受けた勤務体制の見直しが理由だが、名門病院の方針転換は、医療界のパラダイムシフトを印象付けた。地方の医師不足や診療報酬の引き下げなど、病院経営を取り巻く環境が厳しさを増す中、医師の働き方改革についてどう考えるべきなのか。2人の識者に聞いた。【聞き手・構成=敦賀陽平】
●特定社会保険労務士・福島通子氏 「勤務医の考え方が二極化」
政府が働き方改革に力を入れ始めてから、労基署が病院に立ち入り調査を行うケースが増えた。これまで他の産業と比べ、それほど件数は多くなかったが、ここ数年の増加が目立つ。医師の過重労働は、最終的に医師不足の問題にたどり着く。少しずつ改善に向かってはいるが、地域や診療科の偏在に加え、高齢化も手伝って、現存の医師数で解決するのは難しいと思われる。
聖路加国際病院のニュースが、病院関係者に与えたインパクトは大きいと思う。全国有数の大病院で、あれだけ多くの時間外労働が行われている。医師不足が深刻な地方の病院の状況は容易に推察できる。
今回の件もそうだが、労基署の是正勧告を受けても、外来を縮小したり、診療科の数を減らしたりするなど、思い切った対策を取らない限り、小さな改善だけでは、法律を守って医師を働かせることはできないのが現状だと思う。医師不足が顕著な埼玉県でも、午後の外来診療を休止する病院が出てきた。現時点でできるのは、医師の仕事をサポートする人材を増員・育成することだ。
私も研究に参加した社会保険労務士総合研究機構の2012年の報告書(医療現場の労務管理に関する研究)でも指摘されているが、例えば、「フィジシャン・アシスタント」(PA)や「ナース・プラクティショナー」(NP)の日本版のような人材を育成すれば、医師の負担を少しは減らすことができるのではないだろうか。
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