【医療法人社団和風会理事長 千里リハビリテーション病院院長 橋本康子】
2回目は、リハビリの標準化の重要性と、私たちが取り組んだ「在宅入院」について考えます。
■標準的なリハビリの確立を
医療の場合、標準化された治療方針がある程度確立されています。例えば、高血圧ならば、その原因が腎性か、心臓、肥満なのかといったことを調べた上で、原因に沿った治療を進めます。原因が不明の本態性高血圧症でも、使う薬はある程度決まっています。
リハビリの場合、そのような標準的治療が確立されていません。入職して間もないセラピストが自己流でリハビリをしている側面も否定できません。
患者の個別性が高く、リハビリでは標準化が難しいという意見もありますが、高血圧の患者も年齢や生活環境は異なりますし、糖尿病などを合併していることも珍しくありません。リハビリだけが個別性の高さを理由にするのはナンセンスです。
現場では、症状を見て、いきなりリハビリに進んでいます。ここには診断がありません。患者の座位を見ても「ぐらぐらしますね」と言うだけで、なぜぐらぐらするのか、原因を検討していません。いきなりリハビリに進むのではなく、障害学に基づく診断をして、予後予測、リハビリ戦略を立てた上で、初めてリハビリに移行すべきです。片麻痺の患者や失語症の患者への対応方法を標準化し、経験の少ないセラピストであっても、十分な成果が上がるようにする方法を確立する必要があります。
実際、障害診断とリハビリ戦略がなかったために効果が出ず、再度リハビリを希望する患者もいます。
くも膜下出血を発症後1年の60歳代の女性は、老人保健施設にいましたが、もう一度歩きたいと当院の外来を受診しました。診断の結果、歩ける可能性が高いことが分かりました。
当院では、セラピストは医師と一緒にCT画像を確認しています。セラピストでもある程度画像が読めなければ、その後のリハビリ戦略も立てられず、予後予測もできないでしょう。
この女性は当院でリハビリをやり直し、歩けるようになりました。
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