DPC対象病院の頑張りを収益の水準に反映させるのが「機能評価係数II」(係数II)だ。診療実績や医療の質的向上などを評価するもので、毎年4月に値が更新される。業績に応じて支給されるサラリーマンのボーナスに似た仕組みだ。「努力は必ず報われる」と信じたいところだが、関係者からは、年収全体に占めるボーナス部分の割合が低過ぎるとの指摘もある。【佐藤貴彦】
■係数を掛け合わせて機能に応じた報酬水準に
急性期病院が入院患者を治療した際の報酬体系を、サラリーマンの給与体系で例えると、給与額が変動しづらい固定給制に近いタイプと、業績が色濃く反映される歩合給制に近いタイプとに分けられる。DPC対象病院の報酬体系は、固定給制に近いタイプだ。患者の主な傷病などの診断群分類(DPC)ごとに一日当たりの報酬(DPC点数)が決まっており、薬剤などの医療資源をどれだけ投入しても原則増えない=図1=。
とはいえ、医療を提供するための設備や果たす機能は病院ごとにさまざまだ。もし、そうした機能と関係なく決まった金額を支給すれば、一部の病院は機能の縮小を余儀なくされる。
このためDPC病院の報酬体系は、「医療機関別係数」を病院ごとに設定し、DPC点数に掛け合わせる仕組みになっている。例えば、この係数が1の病院と1.5の病院とでは、DPC点数が同じでも、報酬に1.5倍の開きが生じる=図2=。
■診療が適切か、さらに問われる制度に
医療機関別係数は4つの係数で構成され、病院の診療の適切さを報酬に反映させる役割を係数IIが担っている。その評価する軸は現在8つあり、平均在院日数の短縮や、地域医療への貢献などに、それぞれインセンティブを与えている。企業が目標の達成度とボーナスの支給月額(基本給何カ月分を支給するか)とを連動させ、サラリーマンの勤労意欲を高めるのと似た仕組みだ。
DPC対象病院1664施設(4月時点)の今年度の係数IIの最高値は0.1032、最低値は0.0242だ。つまり、最低値の病院ではDPC点数が2%程度しか加算されないが、最高値の病院では10%以上加算される。1年間の報酬額には大差が生じる。
しかも、係数IIの最高値や平均値は来年4月以降、より高くなる見通しだ=グラフ1=。病院の機能を問わずに、前年度並みの報酬水準を保証してきた「調整係数」が制度から完全になくなるためで、今後は診療の適切さが、報酬水準により反映されるようになるというわけだ。
■係数IIがトップ5でも楽観視できない?
適切な診療を自負する病院にとって、こうした評価体系の見直しは歓迎すべきことだろう。しかし、係数IIの値が常に上位の美原記念病院(群馬県伊勢崎市)を運営する美原盤・全日本病院協会副会長は、来年度以降の病院経営にあまり楽観的でない。
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