【東京財団研究員兼政策プロデューサー 三原岳】
2025年の医療提供体制を定めた地域医療構想について、前回は(1)病床削減による医療費適正化(2)切れ目のない提供体制構築-という2つの目的が混在している点を論じた。今回は策定プロセスや内容の精査を通じて、都道府県が(1)の病床削減による医療費適正化よりも(2)の切れ目のない提供体制構築を重視している点を指摘する。
■半数以上の道府県が「必要病床=削減目標」を否定
「地域差の問題について、都道府県にコントロールしていただく」(塩崎恭久厚生労働相)。「病床のスムーズな転換方策などを実施していただきたい」(安倍晋三首相)―。4月12日に開かれた政府の経済財政諮問会議では、こんなやり取りが交わされた。病床削減による医療費適正化に向けて都道府県のリーダーシップに期待した発言だ。これを受け、今月9日に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針2017)でも「都道府県の総合的なガバナンス強化」により医療費を抑制させる方針を示した。
だが、構想策定時点の対応を見ると、都道府県は病床削減に積極的ではなかった。25年の必要病床に対する態度にそれが表れている。もし都道府県が病床削減を重視しているのであれば、必要病床数に近づけるため過剰な病床を削減しようと努力する可能性が想定されるが、29道府県が「強制的に削減しない」「機械的に当てはめない」などの表現を用い、必要病床数が削減目標ではないことを明示した。
背景には、必要病床を削減目標と位置付けないように求める日本医師会への配慮があると推察される。都道府県としては、地元医師会など医療関係者との関係が悪化すると、切れ目のない提供体制の構築というもう一つの目的を実現するのが難しくなるため、病床削減に消極的だった様子がうかがえる。
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