病院が「サービス」を売るようになった-。社会医療法人近森会(高知市)の近森正幸理事長は、それが出来高からDPCに変わったことの本質的な意味と語る。また、今後診療報酬の上昇が期待できず、労働環境が改善しなければ、医師、看護師も辞めてしまうことなどから、多職種による多数精鋭のチーム医療の強化がさらに進むとみている。【大戸豊】
近森理事長は、出来高払いの時、病院は薬や検査などの「モノ」を売る“物品販売業”だったと話す。“売り子”が少ないほど利益が出るので、医師と看護師による少数精鋭で対応し、売り上げが落ちると、人件費を抑えて利益を確保するなど、人に投資するという感覚が希薄だった。
だが、DPCの時代になり、病院は「早く元気になって家に帰ってもらう」という付加価値の提供が欠かせなくなった。そして、良くなったという「アウトカム」を示す必要が出てきた。
例えば、近森病院では、心臓血管外科で手術を受けた患者のうち適応患者の8割が、手術後2時間で立ち上がっている。翌日には経口摂取による食事が始まり、ICUで午前500メートル、午後500メートルの歩行訓練を行う。そして、1週間で元気に家に帰るというのだ。この1週間はDPCで最も単価の高い期間だ。
近森理事長は、このような医療の質と労働生産性は、多職種による多数精鋭のチーム医療でしか上げられないと訴える。膨大な業務をこなすには、医師や看護師以外にも多くのスタッフが必要であり、質と生産性を高め、売り上げを上げ、相対的に人件費コストを削減する発想が不可欠と語る。
同院には約130人のセラピストがいるが、近森理事長は「もし、13人で対応していたら、リハが必要な患者10人のうち、9人を寝たきりにして追い出しているかもしれない。田舎の病院がそんな対応をしていたら、誰も来なくなる」と強調する。
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