調整係数の評価が基礎係数と機能評価係数II(係数II)に完全に置き換わった後、DPC対象病院の経営環境はどう変化するのだろうか-。病院間の格差が広がり、コスト削減などの経営努力がいっそう求められるようになると身構える人もいるだろう。しかし、DPC制度の見直しの方向性を話し合う「DPC評価分科会」の小山信彌分科会長(東邦大医学部特任教授)は、経営努力が行き過ぎれば診療をゆがめ、恐ろしい「負のスパイラル」を生むと警鐘を鳴らす。【佐藤貴彦】
■包括払いへの参加を促した調整係数
DPC制度は、急性期入院医療の診療報酬を包括払いする仕組みとして2003年度に導入された。当初、対象は特定機能病院(82病院)に限られていたが、現在はその20倍超にまで膨れ上がっている。
やった分だけ報酬が増える「出来高払い」と比べると、持ち出しのリスクがある「包括払い」は敬遠されやすい。それにもかかわらず、DPC対象病院は増え続けた。その理由の一つが、前年度並みの報酬水準を保証する調整係数だった。
ただ、調整係数は制度導入時の激変を緩和させるための経過措置。DPC制度に参加する直前の医療費の水準に左右されるこの係数は、急性期病院らしさを評価する係数IIなどに12年度以降、段階的に置き換えられ、今は調整係数(11年度ベース)の上積み部分の25%が暫定調整係数として残っているだけだ。
■「よく理解しないと大変なことに」
その暫定調整係数が来年春の改定でなくなり、置き換えが完了する予定だ。小山分科会長は、それによって病院のコスト削減などの努力が、報酬水準に大きく響くようになる可能性があると指摘する。その上で、「この制度をよく理解しておかないと大変なことになる」と注意を促す。
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