【千葉大学医学部附属病院 副病院長・病院長企画室長・特任教授 井上貴裕】
連載第46回ではチーム医療、特に栄養サポートチーム加算を取り上げた。院内に横串を刺すチーム医療の活動は重要で、加算を届け出てチームのモチベーションアップを図ることを促した。その上で、届け出を行うからには、一定の件数に期待したいとも述べた。
今回はチーム医療の経済性について検証し、医療政策および病院経営の視点を踏まえ、提案をしたい。
■栄養食事指導とNSTのどちらを優先させるか
表1はA病院における栄養サポートチーム加算の経済性を試算したものである(1日当たり、加算で求められる最低人数ではないことに留意)。各職種の人件費は非常勤職員を雇用する水準を想定しており、かなり低めの設定となっている。栄養サポートチーム加算は1件200点で、半日程度のラウンドならば、20件算定できればいい方だろう。1日当たりの採算性を栄養サポートチーム加算単独で見れば、赤字になる。さらに、一般的には管理栄養士が専従配置され、その分の人件費もプラスされる。それに加え、スタッフの機会費用(メーンの業務をしていれば得られたはずの収入が得られないこと)を考慮すれば、経済性には優れない。
連載第46回でも指摘したが、チーム医療関連の診療報酬はそれほど高い点数が設定されてはいない。報酬に関係なく実施するのが当然という視点からすれば、経済性に優れないのはやむを得ない。この加算単独での報酬からは見えない付加価値があると期待されるからだ。
ただ、栄養サポートチーム加算について、考えなければならないことがある。2016年度診療報酬改定で外来・入院栄養食事指導料の評価が引き上げられ、栄養サポートチーム(NST)活動よりも、栄養食事指導に力を入れる方が増収になる可能性がある。栄養食事指導を行った場合は、栄養サポートチーム加算は算定できないので、スタッフ同士で患者の奪い合いが生じることもあり得る。このような場合にどうするのか、病院は見極めを求められている。
(残り1755字 / 全2600字)
次回配信は6月5日5:00の予定です
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】