医療法人鉄蕉会が運営する亀田総合病院(千葉県鴨川市)は7月から、7対1入院基本料へ移行する。5年前から、看護師の養成に力を入れてきた取り組みが実を結んだ形だが、亀田信介院長は「看護配置によるストラクチャー評価はもうやめるべきだ」と主張する。10対1の看護配置で、国内屈指の高度急性期医療を提供する同病院。在るべき急性期医療の評価について、亀田院長に話を聞いた。【聞き手・敦賀陽平】
―今回、7対1入院基本料を届け出ることになった経緯を教えてください。
亀田グループでは、1966年に民間としては日本初となる看護師の養成学校(現亀田医療技術専門学校、鴨川市)を開設し、長年、地域で看護師の養成に取り組んできました。
しかし、女性には結婚や出産、育児といったライフサイクルがある上、夫の転勤に伴って退職する人もいます。都心から100キロ近く離れている立地の影響もあり、7対1を維持するだけの看護師を安定的に確保することは困難だったのです。
少子高齢化が進む中、看護師の採用を取り巻く状況は年々厳しくなっています。亀田グループでは、2012年4月に亀田医療大学(鴨川市)、14年4月に安房医療福祉専門学校(館山市)をそれぞれ開設し、亀田医療技術専門学校と合わせて、年間200人の看護師を輩出させることができる体制を整備しました。
この春、安房医療福祉専門学校の1期生35人が卒業し、ようやく7対1を維持できるだけの看護師の確保の見通しが立ちました。今後、届け出に必要な実績を得た上で、7月1日から7対1入院基本料を算定する予定です。
■業務効率化で看護の仕事に専念
―亀田総合病院はなぜ、10対1で高度な急性期医療を提供できるのでしょうか。
当院では、業務を徹底的に効率化し、看護師がやらなくてもよい仕事は、他の専門職に振り分けることで、看護師が看護の仕事に専念できるようにしています。
例えば、朝の採血には、臨床検査技師や研修医も参加しています。また、事務の仕事はクラークが行い、薬に関しては、薬剤部門が調剤したものをカートで運び、緊急時に病棟で必要な薬以外、看護師は関与しません。さらに、医療材料の在庫管理など、コンピューターで効率化できる仕事は、すべて機械化を図りました。
病棟のクオリティーは、総合力で評価すべきだと思います。例えば、採血は臨床検査技師自らが行って、スピッツに分注して調べた方が間違いは起こりにくい。危険薬にしても、ミキシングした薬剤師が投与した方が安全です。
亀田グループの職員の数は、介護まで含めると4500人に上り、当院だけで3000人近くの職員を抱えています。医師の数だけで500人です。チーム医療で急性期医療を担っているのに、現行の診療報酬は、看護師の数だけを評価している。医師が少ない7対1の病院で、急性期医療ができるとは思えません。
(残り1540字 / 全2711字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】